あせるなよ、あせるな、と呼ぶその声が 雷鳴りしひょうのごとしよ
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サビ残を三時間する夜だからなにかジュワーと焼いて食べたい
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いまどきの夜は静けさ満ち満ちてラジオ・スターはもう死んだのさ
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コバトンは埼玉の顔と胸をはるそんなあなたは東京のひと
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さいはての西のむこうの停車場に毎週火曜ゴミ捨てにゆく
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赤リップ白いワンピに身を包み夜の梅田へ電車で揺られ
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存在は淀んでいるということで私の子宮みかん大らしい
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もうわたしスターバックスの新作が欲しくなくなったの大人になったのね
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筆を執り 塞の川辺で文流し に睡蓮の葉がひとひらり
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青空に散文詩にて物語るダリアの気持ちの揺るる花園
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動けない 夏が見えるカーテンが膨らみへこみまた膨らんで
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陽の色を彈かせてゐるダリアゆゑ白昼の視線ひとり占めする
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風の下たゆたふことなくとき過ぎて躑躅つつじの紅はかすみて点る
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静けさにつつまれ濡るるさ庭にて残んの躑躅つつじわづか紅色
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梅の実が甘くて優しい香りって知らなかったのあんなに酸っぱいから
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月曜日雨上がりの初夏の湯気 日がな一日今日も今日とて
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中年といえば私も中年で売り場の隅の桃と目が合う
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目玉焼き四角くしたい朝もあるいっそちりぢり炒り卵もよし
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三十一の歌病かなこのごろは まどろむ頭が七音さがす
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東から 星の一つが部屋に入り 瞬く間に我が血吸われる
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バラバラな顔 深鍋に放り込みペンキをまぶし焜炉コンロを点ける
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大人には幾重にも枝わかれした欲望の行く迂回路がある
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あの夏に誰捕まえたカミキリムシ ギチギチ言った声が怖くて
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油虫おはよう!日に焼けたその横顔に笑顔 海には誰と行ったの
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厭世肌を焼くコンクリートの照り返し 玉の汗落つ夜の亡骸
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汗涙垢や蝉コの怨嗟節 じっちゃも若衆わかしゅも染みる畳目
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地に伏した柔らかい穴や油蝉 生意気に鳴くはての野山
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土に伏しじっとり濡るる油蝉 見下ろす顔の笑み気付かぬる
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白樺の林雪降るけものみち プロコル・ハルムの曲が恋しい
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鏡見て 喜怒哀楽を作りつつ 鼻の頭の面皰にきびを触る
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