お気に入りの日傘は蒸れた薄緑 枝豆みたいに海が恋しい
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死の淵で 臓器移植の 道探し 闇の世界に 落ちる悲しさ
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栄養を余すことなくいただこう君を食べるならきっとスープがいい
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瞳から溢れ出てくる閃光に三回願う流れてしまった
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我が道を ここまで来れた 感謝にと 助けてくれた 人達の顔
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リハビリで 限界挑む 高齢者 今再びと 立ち上がらんか
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限界で これで最後と 言い残す 錯乱の友 何処へ行く
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バリバリと左上空すぐ近く空気震わす肝も震える
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欧州で 若者と会い 我が息子 過去の悩みが 走馬灯のよう
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君たちももう間がなくれて焦るかとこのごろやたら賑わう蚊
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孫と来て 波間に跳ねる 飛び魚の 姿眩しき はしゃぐ声聞く
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狩る方の気分で見ればたぶんそれ夢の楽園だったのだろな
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雷鳴が。一天にわか掻き曇る雨来る前に窓閉じねばと
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湿度計には便利なる髪の毛の決まらぬ日にはデザートを買う
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元来の祇園精舎になき鐘は片手で鳴らす柏手のごと
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オンライン がっぷり四つに組みまして タカシマヤさんとやっと繋がる
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明日には 明日の風が 吹くなどと 昨日の僕は 今日に嘯く
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じゃあまたね 柔風遊ぶ 昼下がり 髪帯リボン結びは はらり解けゆ
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目を閉じて悪夢のように押し流す 嫌いになってしまった夏を
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希望なら手に入るけど絶望を歌うためには足りぬ文字数
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「どちらでもない」世界だと言い聞かす 何にもしたくないからだよね
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朝夕の涼気は何処いずこ 汗を拭き 見上げる空に雨雲の湧く
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バスの中サービスエリアに競いたるエンジン音と海苔のパリパリ
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気象予報 め付けながら選びしは 晴雨兼用傘とサンダル
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手羽元を午後は気にせず休みたく 午前中からプスプス刺せり
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就活を〈終活〉とはよく言ったもの 生きるために命を削って
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脳みそが起きている時に限って、体が追いつかないもどかしさ
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『わたし語』で話す私は「グッバイ」も伝わらないまま死んでゆくの
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ふんわりと羽織はおる上着は七分袖数センチだけ秋が深まる
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拗ねておる ちま猫のおくち ぷっくりと 「おとうちゃんはすぐ ごむたいなことを」
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