アスファルトのうえに薄膜の海がある 裸足で歩けば雨があたたかい
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リラ去りて乙女椿も去りていま青空に夏緑の湧き上がる
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臓腑からおきに焼かれをる真昼の満月はまぼろし私の声も
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庭に一つ朱のガーベラが咲き出でて長き夢へと誘ふ午後二時
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瑠璃茉莉るりまつりみづ色の夏は留まらぬハーバリウムの壜もちきても
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水やりに小さき虹の立てる庭あはきあを葉の田舎へつづく
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瑠璃玉とみまがふ露をちりばめて虹へと消ゆる薄き紫陽花
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ひとつ露の抱けるおほき夢ごとはしづけき森に立つ歌の虹
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てのひらの生命線を辿る 今どこまで来たかちょっと教えて
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あしたにはぼくらはいなくなるでしょう生存可能温度を超えて
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自動車で蝉の死骸を轢き潰す 文明はヒトに奢りを与えた
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お天気を宥められずに仕方なく癖毛と共存爆発出社
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「こうかしら? いや ああかしら? …どうかしら」 歌を詠むとき 日々生きるとき
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ザジテンとテオドールとの二人組?いえ、喘息の薬の名です。
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ずぶ濡れでげりらごううという語句の音のひびきに笑う子供ら
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薄あをと薄みどり色の壜のなかラムネの恋はうたかたと消ゆ
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肝心なことは冷蔵庫の奥の果実のように腐食している
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このまんま眠れたらなあ夕飯も生きることさえ忘れたまんま
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レモン色の孤独を抱えて沈んでくふとんはあの日のあなたみたいだ
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オフィカジュをまといし彼女ヒール脱ぎ 烏となりて山に飛び立つ
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風そよぐ草葉を横目にサボテンは謎の覚悟の塊となる
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鈴の音にちりりと揺るる色残す風のなでゆく一の字の猫
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掴みても掬ひてもなほ色のなき青をうつしてある空と海
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地に引かれ堕ちたての林檎ひんやりと夏の日の手につめたく座る
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傷つきし林檎に蟻や蜂群れて隧道を掘る先には宴
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迷ひ無きひとすじの黒につながれる宴ゆめみる蟻の万歩よ
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その人にその人なりの生活をみんな生き抜き今そこにいる
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とりどりに囀り歌う鳥たちも恋つたふるはその鳥のうち
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無着色ながら真っ赤なケチャップをつけてポテトを無意識に食う
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話しつつ山川草木その空もつたふる人の発声練習
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