山の手に行く手憚る 絶え妙に 宵も酔いしろ 浅鳴く楓
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古き友あの頃語るあらイヤだ 思い違いのほぼ半世紀
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ひさかたに を忘れて気がかりも UTAKATAに会え知るも楽しき
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デンパタに うぶ毛がはえて 毛が三本 やがて黄金こがねの 風のかたち
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短歌うたを読み思い起こすは故郷の一家総出の田植えの五月
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曇天がどんどん暗く、雨脚も傘をさすほどにひたひたと
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始発は今日も走るよゴーゴーと、雨のなかもひるまずに
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動物は生殖せざれば絶滅す人間とても例外ならじ
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友に会ひ お互いエ~ルを交換す 若き時より本気の本気で
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うたかたでヤマボウシ咲くころという 公園の花思いて癌セン
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若いのに演歌大好き作詞してやると言ったら話を変えた
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レコードにならない作詞家だったと下敷に歌詠んでもボツで
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入院し明日の手術の話聞く一週間は主夫しなくても
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銀行を辞めてバイトだ警備員脱サラカメラ屋の夢結果
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私しかいないんだから刃先側こちらに向けなくてもいいんだ
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今年一暑くなってる教室でみんなクラゲになった夢見る
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窓際は夜あるかぎりの安寧で誰も消えない言い聞かせてる
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彗星は今日もどこかで眠れない窓辺のだれかをあかるくしてる
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なまぬるい結露がどこかにきえてゆく はたしてそこに地獄はあるか
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きみきらり どうか一等星のまま世界を愛して愛されていて
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お雑煮もおからみ餅もお汁粉も正月過ぎても好きなら食べろ
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快晴の並木を歩きふと見上げ葉裏に認める澄んだ緑よ
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会場を知らせる葬儀の看板が知らない誰かを現世に戻す
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蒟蒻を初めて作った人たちを想ってふるえる蒟蒻の子ら
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特別なきもちを深く携える何でもない日の炊き込みご飯
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強くなる手段選ばず爪に塗る接着剤は奏者の誇り
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過去なんて黒い歴史は嫌だった戻れるならば消し去ってやろう
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手のひらに何故と見つめて弾くトリル初めて「らしく」なるノクターン
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美味しいか?それは何より。タバスコと君の小指は冷蔵庫の中。
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駅ピアノ大円舞曲を弾いていた女子高生にびりびりと来る
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