よし誰も見ていないからドーナツを素手で取っちゃえを見てるわたし
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我が親友ともが かけがえのない我が親友ともが がんと知りては沈む日続く
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春風を臀部に浴びて削れてゆくだけさと笑うブロンズ像
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車にて谷間たにあいの路を走り行くはく木蓮の街路樹つづく
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売ってない無くしたならばどれほどに当惑するか愛用の匙
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「赤ちゃんか!」口では言いつつ待っている 抱っこをせがむ君の一言
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命日に記憶は巡る幼き日父が削った鉛筆並べ
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口癖の「あのねあのね」が可愛くて こっそり押した録音ボタン
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突き破るコンクリートの割れ目から緑鮮やかしばし足とめ
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ねこだって おくち「いー」になる ときもある がみえている たいそうかわいい
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ハミガキで お口「いー」する ついでにね 鏡に向かって 笑顔の練習
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いい夢を見てスッキリと目覚めたい なかなかそうもゆかぬのであり
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三年みとせぶり旅立ちの朝巡りきて空晴れ渡る 孫ふたり分
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バリバリと鳴き出すラジオは先触れの少し遅れて盛大な雷雨
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音立ててカエル飛び込む池端に宗匠頭巾の人影を見た
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薄く伸ばしたバターの香りの原石をルースにしていく型抜き
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哀しみと 怒り交互に打ち寄せる うるさい、黙れ 独りにしてくれ
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テーブルを転げた箸はそうだよな隅の埃を纏い横たう
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この道を 涙あとつけ 歩いてた 今懐かしく 春はうららか
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久し振り 辛い顔した 息子見て もっと気楽に 生きてもいいぞ
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阿保になれ 善良にして 明朗で 快活にして 親切な阿保
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桜月いっきに変わる日常を想像したり壊してみたり
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そうなんだ 神経質な 人たちが 世界を暗く 陰鬱にする
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ピリピリと 真面目な人が いるときは 私は逃げる 見えないように
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春風に散る花びらを追い そっと受けとめる 優しい貴女の手
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転がった サッカーボールを 蹴り返す ただそれだけで 怒られました
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暴力の 中で育った 少年は ひどい言葉も 甘い甘いと
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死にたいと ポツリ呟く 少年の 悲しい目には 灰色世界
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秘匿の園に客人が来たときの魔法 笑顔で「いつかお話しましょう」
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真夜中にいかづちとどろき起こされて稲妻走り真昼の如し
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