ひとりにて我風呂つくる夕餉かな 味噌汁のなか泳ぐ三月
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あの笛を 買ってとねだる 娘(こ)をみれば  その指先に 翁草笛を吹く
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I amを仮定して境目をなぞるこれを私の文学とする
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かのひとの残したように限りある鱗を剥がすよに歌を詠み
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悩みとか心配事は転がそう  三角定規のお山の上から
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波風に 巻き立つ砂は 忘れゆくなにかのかどを 削り流れる
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君という 大きな槌に 叩かれて 僕はどんどん 澄んでしまうの
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心臓を蹴り飛ばすみたいなキスで今すぐ夢を終わらせてくれ
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忘れ雪温泉の中君恋ゆる隣人と我眼を見合わせむ
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忙しい! 頑張る心も 亡くなった 「心亡」こころなくすを 「忙」いそがしいと云ふ
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忘れたい! 思う心も 亡くなった 「心亡」こころなくすを 「忘」わすると云ふのだ
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傷口を わざわざさらす 理由はない だからわたしは 口を閉ざすわ
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自由律短歌を何首 詠んだとて 自由になれたためしなどない
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石たちを見つめる君のの色に溶け合う石で指を飾ろう
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僕だけが いない街です 僕だけが ただ僕だけが いない街です
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ごろごろと茹でた卵を取り出して握り潰してしまいたい夜
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ひんやりと電車の音が突き刺さる 僕はまだ息を止められない
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魂を 自らの手で 研磨して 濡れて輝く 悲しきダイヤ
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あまりにも まぶしくひかり つぶれた目 故に呼ばれる “恋は盲目”
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沈黙が 風が通りすぎてゆく おそらくもっと、大事なものも
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一緒だとなんだか胸がいっぱいなんだ  チーズケーキ、ひと口ちょうだい
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カーストの てっぺんにいるやつらには そもそも下など見えてはいない
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短歌短歌詠めぬ鍛高なんだっけそういやどこに隠した酒は
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「つまり君、そういうやつだ」真似するのだいたい友達ルロイ神父と
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ピラミッドなかに描かれたガチョウ達卵はだれが温めるのか
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空色の 石を眺めて 僕はせめて 遠くの君の 無事を願うよ
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栞など 使わないなと思ってた 大人になるって すこしさみしい
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このスマホ もちろんロックはかけてある だがお前なら 開けるかもな
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図書館の返却期限を迎えても 読みきれない本、俺の無力さ
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閉ざされた 無垢な善意に 潰されて 押し花にすら なれない枯れ木
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