願わくばスピーカーより聞こえくる声に吾の名を呼ばれたき春
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壁を背に君はいだかれをひらく 「恋」と聞こえて「愛」にきたから
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便箋のひとつで終わる恋ありて春はしずかな湿りを孕む
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ならきみの体に吸い込まれてゆくうどんのようにそうなのだろう
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ゆめは旅 寂びた道路にうずくまり後ろめたさを味わうための
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愛された分だけ寿命が縮むとしか思えない猫の一生
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「月食見えなかったね」と月色の目をしたこのに語りかける
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思い出のなかでぐらいは綺麗でさあれよと地団駄踏んでは虚し
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この先へ破船はとおり過ぎてゆく波の音さえ砕くことなく
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降りてゆく蒼いとばりが日中の熱を溶かして素足に優しい
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最小の数を求める指先の青藍色がひらひら踊る
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野生のツツジは丸くもないし四角くもない 岸壁に咲く鮮やかな赤
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雨後の靄 苺は光の比喩である 私はそっと苺を摘む
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八月の私は無限 海を背にカーブを描く小さな車
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服を買う たぶん一生着ない服 存在しない私のための
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厚切りの休日加減よく焦がし少し溶かした甘えを乗せる
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夕焼けが居残りしてる二十時に僕のパジャマは月を待ってる
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クリームかバターのようだ君の声口に入れるとたちまち溶ける
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あいつらは羽ばたく器官を持ってないこんなにきれいで気持ちがいいのに
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さらさらと帯解くひとのおもかげのよみがへりくるひとり寝の夜
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一歩ずつ てっぺん向かい 歩みつつ 顔上げれば 天海眺め
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上を向け 上を向いてる うちはまだ 期待できるし 成功もあり
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少しずつ 変化してると 感じつつ 時は地殻 変動もあり
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今日もまた 同じパターンを 繰り返す 少しの違い 感じて祝え
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死してなお 文句も言わず 幸せと 公言したる 英雄たちよ
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望みなど 叶ってしまう ほどのこと 叶わぬ望み 欲しがる病
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悲しみを 分かち合うほど 友も去り 喜び薄く 友も遠のく
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ジャンバルジャン 人に頼るは 子供にて 神に頼るは 大人の仕業
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魂の 奥の叫びを 文字にして 誰も見ぬ間に お蔵入りにて
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十なのか 世界の端に 飛んで行け 光に乗って 誰かの元に
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