満月しじま
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 二〇一一年より冠句をたしなんでおります。
 その数年後からは短歌も浮かべば書きとめており、この度そちらも公開することにいたしました。
「満月」は「みづき」と読みます。
 至らない点が多々あるかと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。

接吻の熱でゆっくりウイスキーボンボンひとつ溶かしませんか
9
「閉店」の文字は硬くて「なくなる」の言葉は哀し 一月の末
7
感情が渇望になる寒夜には君の名前を叫んでいいか
9
しあわせをしあわせとして噛みしめる三十二回目の誕生日
10
十分の砂時計では愛情を計れずにいる秋の夕暮れ
8
砂時計ひっくり返すかのようにもらった愛をあなたに返す
9
おぼろ夜の青信号のさえずりの隙間に涙は落ちるのでした
7
海底のクジラの骸 永遠をいまだ証明できない僕ら
5
まだ青の青さを知らぬ君の眼にこれからもこの世界は映る
5
夕照に染めあげられて無伴奏チェロ組曲はゆたかに響く
6
悲しみを悲しみとして受け入れる シンデレラにはなれない私
5
イタリアンドレッシングで溺れてるレタスを救うシルバーフォーク
6
教室でしかあなたには会えなくて憎らしいほど澄んだ夏空
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海底に沈んだ都市がありまして想い出として生きている君
3
やわらかき桃をつぶして種を出す もう被害者に戻れぬわたし
7
白桃にナイフを入れるやさしさでわたしのこころに入ってきてね
5
三日月の舟で銀河をゆきながら君とナイショの話をしよう
2
同じ色している空と海のよう 惹かれあうことさえ罪ですか
1
攻撃は他人ひとがするのでわたしからわたしへ贈るやさしい言葉
3
病院を出れば二ヶ月ぶりに風秋の色して私をつつむ
2
左手のリストバンドを切る音がこの闘病の閉幕の鐘
3
わたくしを待っててくれる人達にひかりの雨よふってねふって
1
退院の後を想像してみればオーケストラの指揮者の私
2
まだ暗き午前五時前赤ちゃんの写真まぶしく私に映る
1
会いたいと思ってる人と待っていてくれる人が一致すること
1
五時半の雲ひとつない空は青、 紫、ピンク、オレンジの彩
1
ふにゃふにゃのリストバンドにわたくしの八週間は刻まれている
2
粛々と夜の緞帳下りてゆきホホバオイルがなじんだ私
0
ブリだって思わなかったはずだろう死して焼かれて食べられるとか
1
なっちゃんのオレンジジュース口つけて今は少女の私になろう
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