満月しじま  フォロー 0 フォロワー 2 投稿数 127

 約十年前より、小説(二次創作は別名義)と冠句をたしなんでおります。
 数年前より短歌も浮かべば書きとめており、この度そちらも公開することにいたしました。
「満月」は「みづき」と読みます。
 至らない点が多々あるかと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。

僕じゃない誰かのために純愛という香水はまとわれている 

紅い押し花の栞が挟まれたいくらか褪せた恋慕のページ 

一点の黒が真白き壁にあり自分の罪科ばかりを思う 

憂愁のロ短調から祝福のニ長調に転調した恋 

女だという悦びの染みた身によりなじみゆくシャネルの五番 

哀愁の霖雨に被弾しつづけてそれでも黙している紫陽花 

久々に対飲すればいつもより父の目尻の皺が深まる 

この風とこの雨で咲く花がある今は光が見えなくたって 

しめやかにくちを重ねた 豪雨にて隔絶されたような小部屋で 

早緑は梅雨踏み越えて濃緑となる 若者よ負けんじゃねぇぞ 

この家に俺だけひとり遺されて 澄んでいたはずなのにな空は 

この海の美しきもの見逃さぬように歌集はゆっくりめくる 

筆入れの中に消しゴムだけがない忘れたいことばっかりなのに 

ひとつぶも上白糖のない家で離婚届は書かれています 

「回り道にも花は咲く。だからもうちょっとゆっくり歩きませんか」 

素直さという名の糸があったなら紡げたはずの愛の詩、夏 

楕円なるホットケーキもまんまるの愛情で作られているんだ 

あの夏にあなたがくれた赤い傘いまもだいじにしまっているよ 

しあわせは失う前に気づきたい青きリンゴをガリリと齧る 

明日には五歳のきみの手をにぎる あったかいねちょっとさびしいね 

星図にはなき星探す人がいてホットココアはゆたかに香る 

茜空はいつも青を孕む よく笑う人にもある悲の部分 

本心は欄外にあり 今ならば太宰の気持ちわかるよ解る 

梅雨さなかあたかも天に手を伸ばすように咲くんだね立葵は 

立葵のような人になりたいとつぶやく君に「もうなってるよ」 

浴びていることに気づかず浴びていた慈雨 母の日にカーネーションを 

「お母さん」あと何億回だって呼ばれたかったよあなたの声に 

雨音はクレッシェンドの気配してカフェにあなたの足音はまだ 

少しずつ風化してゆくあの夏に油性のペンで書いた恋情 

あぁ、いくら洗濯物がたためても心のたたみ方は知らない