満月しじま
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 二〇一一年より冠句をたしなんでおります。
 その数年後からは短歌も浮かべば書きとめており、この度そちらも公開することにいたしました。
「満月」は「みづき」と読みます。
 至らない点が多々あるかと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。

バーボンで呑み下せない男の悲抱きつつ夜はそれでも更けて
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僕じゃない誰かのために純愛という香水はまとわれている
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紅い押し花の栞が挟まれたいくらか褪せた恋慕のページ
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一点の黒が真白き壁にあり自分の罪科ばかりを思う
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憂愁のロ短調から祝福のニ長調に転調した恋
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女だという悦びの染みた身によりなじみゆくシャネルの五番
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哀愁の霖雨に被弾しつづけてそれでも黙している紫陽花
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久々に対飲すればいつもより父の目尻の皺が深まる
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この風とこの雨で咲く花がある今は光が見えなくたって
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しめやかにくちを重ねた 豪雨にて隔絶されたような小部屋で
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早緑は梅雨踏み越えて濃緑となる 若者よ負けんじゃねぇぞ
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この家に俺だけひとり遺されて 澄んでいたはずなのにな空は
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この海の美しきもの見逃さぬように歌集はゆっくりめくる
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筆入れの中に消しゴムだけがない忘れたいことばっかりなのに
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ひとつぶも上白糖のない家で離婚届は書かれています
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「回り道にも花は咲く。だからもうちょっとゆっくり歩きませんか」
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素直さという名の糸があったなら紡げたはずの愛の詩、夏
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楕円なるホットケーキもまんまるの愛情で作られているんだ
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あの夏にあなたがくれた赤い傘いまもだいじにしまっているよ
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しあわせは失う前に気づきたい青きリンゴをガリリと齧る
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明日には五歳のきみの手をにぎる あったかいねちょっとさびしいね
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星図にはなき星探す人がいてホットココアはゆたかに香る
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茜空はいつも青を孕む よく笑う人にもある悲の部分
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本心は欄外にあり 今ならば太宰の気持ちわかるよ解る
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梅雨さなかあたかも天に手を伸ばすように咲くんだね立葵は
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立葵のような人になりたいとつぶやく君に「もうなってるよ」
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浴びていることに気づかず浴びていた慈雨 母の日にカーネーションを
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「お母さん」あと何億回だって呼ばれたかったよあなたの声に
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雨音はクレッシェンドの気配してカフェにあなたの足音はまだ
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少しずつ風化してゆくあの夏に油性のペンで書いた恋情
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