満月しじま
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 二〇一一年より冠句をたしなんでおります。
 その数年後からは短歌も浮かべば書きとめており、この度そちらも公開することにいたしました。
「満月」は「みづき」と読みます。
 至らない点が多々あるかと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。

あぁ、いくら洗濯物がたためても心のたたみ方は知らない
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月も星も誰もいない今夜だけただの男と女になろう
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半分に割られし桃を君と食むときしずしずと積もるしあわせ
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歌姫が「あ」の一音で染めあげる初夏の朝空 恋がはじまる
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心から生まれこぼれるものだから涙は詩だよ 我慢しないで
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誰の名をなぞっているの やわらかく光るピアノを弾くその指で
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はつ夏のひかりを帯びる日記帳 たったひとつの「五月」の文字で
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その名前呼ぶとき君はいつもより春のひかりの表情かおになるよね
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さぁ行こう春光が指すあの場所へ 不協和音は止んだのだから
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きみの声だけ聴いてたい不眠にも胃の不調にもよく効く薬
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若い芽を摘むな蕾も摘むな空の青さに罪はないだろうが
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この足じゃどこにも行けない行けないよ 光も影も抱く三月
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「不倫などよくある話。そうだよね、だけど許せるわけないじゃない」
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逃げ道はどこにもなくてキリキリと絞められている我の細首
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さびしくはないか、桜(二〇二一年三月 コロナ禍)よ 静寂に包まれている二回目の春
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名を呼べば咲きみだれる花のいまだ名を与えられていないつぼみ
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願わくばスピーカーより聞こえくる声に吾の名を呼ばれたき春
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便箋のひとつで終わる恋ありて春はしずかな湿りを孕む
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人生が物語ならば君、それに音楽をつけたくはないか
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なにもかも春は輪郭やわらかく雨さえ愛のように思えて
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「玉ねぎがしみただけだよ。大丈夫、つらくて泣いてるんじゃないから」
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菜箸で黄身と白身をかきまぜる 君に問いたい不倫の理由
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傷を抱き疲弊せし吾を今やっと泣かせてくれた鮭の塩焼
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寒いなら私の熱をあげるからだからひとりで震えないでよ
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届かぬと知るも紡いだその詩が思わずこぼれ落ちてしまった
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関係が終わるときには体内でなにかの音が響く気がする
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その方はいつも心に燃え盛る炎を抱いて生きていました
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「生きているうちに忘れることなんてできるでしょうか。いえ、できません」
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かなしみの波に溺れてしまいそう縺れた糸のほどかれぬまま
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風船に吹きこむものが息でなく愛であったらよかったのにね
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