満月しじま
0
7
投稿数
216

 二〇一一年より冠句をたしなんでおります。
 その数年後からは短歌も浮かべば書きとめており、この度そちらも公開することにいたしました。
「満月」は「みづき」と読みます。
 至らない点が多々あるかと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。

直青の空に手を伸ばす 明日には君も一歳父母も一歳
1
金色の蝶はリボンをたずさえてページの森を舞っております
0
栞だけいくつもあって人生は一冊の本のはずなのにね
0
林檎には芯が葡萄には種がある捨てないでくれ母よ心を
2
近づけば近づくほどに遠くなる君の心はどこにあるんだ
1
きみの指が愛した鳥を開いたらやわき言葉の浮いたみずうみ
1
クシャクシャに丸められない恋だからどうせ振るならひどく振ってね
1
銀色のフォークを桃に突き立ててお前を今夜こそ抱くからな
1
落ちるのを我慢するかに花震ふ きみにわたしはひつようですか
2
去年こぞ買ひし三年日記の頁繰り吾が手で正す祝日三つ
1
真白なる紙飛行機を夏空の果てへと放つような黙祷
1
父親になってくれないヤツをまだ想う君を嫌いになりたい
0
独り身や子を産めぬ者が負け組となぜ呼ばれるか理由を述べよ
2
義父となる人のためロックグラスを吟味する君 もうまぶしいね
0
もし都市が水に没していたのならきっとぼくたち出逢わなかった
1
また花を日は灼き雨は打ってゆく優しい人の人口比率
2
傷つけて傷つけられて心臓の正確な位置知るとか嫌だ
3
不合格という書式で作られた無言の刃物 もう襲うなよ
2
蹲ることは罪ではないけれど立ち上がらねば烏が嗤う
1
そばにいることだけが愛じゃあないと教えてくれた紙の住人
3
心臓を抱く肋骨は脆いので言葉遣いに注意しましょう
3
絞首するように私を後ろからあなたはいつも抱きしめますね
0
催涙雨なんて言葉で運命をそんなあっさり片づけないで
0
七月を愛逢月と思う度あなたの声が聴きたくなるの
0
「いつかっていつのことだよ」「ごまかすな」「ハッキリ言えよ」今日も言えない
1
恋人がいるなら先に言っといてアイスが転落死したじゃんか
4
ピリオドはあの日に打ったはずなのにいまだに押せぬ削除のボタン
1
しあわせが輝きながら満ちてゆく六月、ブーケ、白、ニ長調
0
忘れるな その日心に広がったレモンの香りレモンの味を
0
捨てきれぬ火の想い出をたどりつつドライあんずの一粒を食む
0