水無月の一日となりて帳面に黒くはっきり月初の数字
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沈んでは浮いて沈んでまた少し 浮きながらはく水の輪どこへ
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百億の眼がともに見る夢ならばほぼもう現実のようなもの
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燃ゆ躑躅 一輪手折る 吸いあげた 火傷しそうなほどの蜜
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温もりの仮定法で雨宿り かじかむ手の甲消えゆく足先
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本日の死因予定をつみとった名前の毒でくすりと知らず
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いやなこと束ねて茹でたパスタでも下手くそって君は笑った
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観光バスでほろ酔い 御祈り帳に書いている 「空海の風景」
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どこにでもいけるはずなどないけれどこの頃ゆめの終わりが来ない
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意味もなく筆をとったりしてるから空振るこころ残りの週末
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「歌なんか 歌わなくてもいいんだ」 と 言ってやれたら どんなにいいか
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点であることの宿命 消滅も遍在もすることができない
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今日もまた「おやすみなさい」君にゆふ遺された明日も明後日も
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人変わり 代わりの人は 多けれど 君を忘れず さよならと言う
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夕日差し 君の髪まで 黄金色 さよならを言う 時すらなくて
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金持ちは この世を愛し 幸せに 暮らして老いる ああ君もまた
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若者よ 無駄に時間を 費やすな 老いて後悔 することなかれ
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棺桶に 片足入れて なおさらに 未練がましい 老人の恋
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悍ましき 心に人は 退きて 呆れ果てたる 老人の恋
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答えなし 円周率に 終わりなし 実ることなし 老人の恋
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壊れたか 人の心の 凄まじさ 理不尽にして 老人の恋
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慕い寄る 麗しさなく ぼんやりと 夕焼け眺め 老人の恋
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現実を 思い知らされ 絶句する 老いた姿を 誰も好まず
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文学をしたいんだけどいいっすか なんか立っててくれればいいし
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寝る前に日向を歩くと見る夢を覆うようにシャッター閉めた
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夏風を 切り裂く君の 後ろ髪 染まらないでよ このままずっと
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泣きながら玉ねぎ刻む 生活と両立可能な悲しみもある
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がんばって外れてみたら無視された散布図内の点の瞬き
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あなただけ 赤色灯の灯台へ続く波止場をゆっくり渡る
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われわれは風に傾く草木です 私はひとりホームへ降りる
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