窓のそば ふんわり月の 照明が 穏やかな僕の 目を刺すナイフ
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歌屑をとぎれとぎれにちぎりつつとき色の日の暮れに放たむ
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やはきたへにつつまれ低く鼓動する遠きうつつのオキイフの白
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天いろの宙を追ひかけ空も海もやさしき青にたどり着きぬる
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かさぶたを剥がしていいよといえるほどのふたりにぼくらなれただろうか
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白日にさらせホテルのライターを はばかられるばかりの逢瀬を
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夢の中いたんじゃないか本当は 更けた夜を囲む白衣
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神様が雨を降らせてくれたから虹の写真をあなたに送る
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このもじはこころのすみでこっそりと うたわれていたうたのかげです
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幸せをたくさん祈ってもらうより擦れたかかとを肯定されたい
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君の傷私に分けてほしいんだ 治しかたを覚えるために
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良い夢を見たいと君は言うけれど大丈夫だよ夢で逢おうよ
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万人を殺す真夏の稠密に 気持ちのsemaphoreセマフォ埋められている
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もうアカン虜ですひでひこ好きだひでひこ好きだひでひこ好きだ
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かざらない白のクイーンをとり上げて青きセージの海に置きたし
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たすけてと素直に言えばよかったなかつてイルカを呼んだ軽さで
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ペヤングとUFOほどの差でしょうねあの娘にするか私にするか
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永遠がここにあるから眠ろうかルソーが描くジャングルの隅
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水色のレンタカーで行く笑っちゃうくらい正しい九十九里浜
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さようなら いつかあなたの声帯を震わすひだになろうと思う
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湧いて出た唾ならかまわないのだがよそものは断固おことわりだね
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鏡には綿のパンツにシヤツ帽子かざらなき日のわたくしうつす
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ほつほつと小花をちらす涼風すずかぜにたゆたふ白き夏の南天
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みづ色を好みしゆゑにみづ色はいつも小さきかなしきクレヨン
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夏陽なつひさす溢れる汗と入れ替えに沁みる麦茶が同化していく
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広重の線の雨ふる五反田を肘笠にして走るワイシャツ
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電話越し あなたに「好き」と言えなくて 沈黙の果て ふわりと笑う
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風を切りあをの線画を貫けるつばめの空を抱きてみたし
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赤ばらの花びらの底に羽虫ゐて赤き壁より宙を見あぐる
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くたびれし頁の余白にひそみつつ意味をころがす歌のことのは
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