透徹の視線に潜む逡巡は自覚できないほどに素早く
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隣人の情事熱を帯びてゆく夜 雨はただ排水溝へ
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養ふに値せぬ身の幾億の一として我が身をもゆるさむ
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陽は白く染めぬいてゆくあたらしい世界知りたい開け放て窓
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忘れるな その日心に広がったレモンの香りレモンの味を
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捨てきれぬ火の想い出をたどりつつドライあんずの一粒を食む
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バーボンで呑み下せない男の悲抱きつつ夜はそれでも更けて
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音楽は 聴かれるために あるように 人は愛され 愛するために
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「見てません」「言っていません」「知りません」明日はどんな嘘をつこうか
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ふたつ貴女がつまむ赤葡萄 東京はいま梅雨のさなか
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文化カルチャーが灼き尽くされて半世紀 持続可能サステナブルな世界は回る
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胸に手を当てて気付いた あなたわたしにはわたしあなたのための心臓が無い
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こんなとこで 心中春嵐 奪われて あなたは何を 残すのでしょう
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街を行く 制服まとった 相合傘 私の袖も 今はぬれつつ
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きみといる時間とひとりの温度差でやけどしそうだもっとちょうだい
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悲しみで心いっぱいなったならもういいよ帰ろうあの時に
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約束を待ちかね焦がれ鳥になり行ってしまった心、許して
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健やかなるときも病めるときも独り鐘の音を聞く街路の上
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ひとつだけ心の窓を開けてみて吹き込む風が世界を変える
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人生に絶望したって大丈夫そこが本当のスタートだから
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君の横通る時だけ気になって後れ毛耳に掛け直しちゃう
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ささやかな私の中のジンクスは君のマスクが黒の日ラッキー
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目覚めては都会の価値は薄まってやがて私は海へと向かう
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白花のあじさいにバシャリ紫蘇ジュース染めたかったり染まりたかったり
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悔しさがあれば進める泣けばよい 立ち上がるならまだ負けてない
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午後九時のブラックコーヒー飲む君はこれから何をするというのだ
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梅雨だからたくさん歌を詠いたい傘や紫陽花とか君のこと
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遠くでバックドロップの音がして児童相談所が起きる夜
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我が言葉空中散布せよドローンされど書庫にはデータ残らじ
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街中に金属打音が鳴り響く改修工事のビルの屋上
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