晩酌の吾を見上げる此の犬は肴を置きし飯台の下
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ぬけだせぬ見えはしないが確実にがんじがらめに縛られている
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このままじゃ生きていけない苦しみも眠ってしまえばすべて忘れる
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飛び交ったLINEの波を見送って 明日晴れたらいいね、おやすみ。
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人の世の 儚き夢をなぞりつつ うつろう影も 延びる黄昏れ
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私だけ置いて母さん逝かないで よく見た夢はそうなってしまう
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抜かずにおれば紫のこのような花つけたろと土手の草見る
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奥入瀬の 水面を染める 春の雪 分水嶺に 美を描くとは
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立葵天から伸びる指先に真っ直ぐつまみ上げられていく
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あなたのいない世界でも 私は多分生きていく 鬱金香の香る季節に
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嫌われた事実を受け入れないために嫉妬されたと脳内修正
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やっぱりさ生きてんのって疲れるね五月の影の濃さ見つめつつ
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三文の徳って一体なんなのさ朝まで泣いた枕は砂漠
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陽の長く なりゆく日々よ夏近し 八十八夜も すでに過ぎれば
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コーヒーをブラックで飲み大人へとちょっと背伸びし新聞も読み
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大の字で寝ている僕の左肩丸く寝るハナ猫なのに「犬」
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筋トレを 二人並んで 始めた日 想像したや 老いた私ら
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朝なのにやる気が出ないこんな日はミルク粥食べとろけていよう
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こぼれ落つ ひとつぶの涙 ひとみから あなたに愛されなかった くやしさ
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なつかないポケモンみたく誰彼に八つ当たりだけ繰り返してる
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どちらにも泥にまみれた道路のみ独身者を同志にあるく
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あの夜、の三文字で思い出す夜は何色ですか何味ですか
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幽霊はあっさりすり抜けられるから試練を壁と言わないらしい
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体型はマッチョでワイルド19歳 届いた恋文てがみちっちゃい丸文字
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きみに似た朝陽を隠すためだけに完全遮光カーテンを買う
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においだけするが姿の見えぬあの馴染みの苦さドクダミは何処
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外をゆく 幼子は履く軽やかに トテチテチテトと 歌うサンダル
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雑草を抜けば大量食えぬかとぐうぐるれんず毒だ食うなよ
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おそらくはイケてただろう室町に生まれていたなら僕という顔
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詠むことと コメント付ける 両方の バランスわるく 悩むフェイスブック
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