紙とペン今朝も鞄にゆれてゐるふとやつて来る歌と遭ふため
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我が歌は翼得たりて海を駆け 喜望峰にてツバメと踊る
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はれて豊か山吹色の伸び伸びと今年の幸のほがらかなりて
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日々交わす 共に固有の美のかたち 生活として 労働として
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骨鳴らし黒ねこの様なのびをして宿直室で残り二時間
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地球には耳に蛸住む土地の在り 移住のために仕事辞めるなり
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秋の朝雨降る中に新聞を配達するか手抜きもせずに
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今日は星の巡り合わせが悪いから君への挨拶引っ込めちゃったし
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ヒロインのアニメ声真似る母親の声コロッケに乱反射する
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磨崖仏まがいぶつのごとき守衛を通り抜けく面接なり夕飯を想う
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窓際でサボテンのみ聞くさと言葉 押し黙り居るはめ殺し窓
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王冠を被りてターレで駆け抜ける 競り声競り声追い抜けコノシロ
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さよならと同じ温度の色彩じゃ星の光を再現できない
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いつかまた私が死にたくなったなら呼吸の仕方をキスで教えて
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お別れを月の黄金で染めたのに稲穂の海にもならない話
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酒呑みの宿痾をいだく我が脚よ待てすこし待て今ぞたけなわ
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レモンサワー呑んだら少し赤らんだあなたの頬をムニッとつねる
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磊磈らいかいをゲゼルシャフトに嵌め殺す午前八時の丸の内ビル
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読みし者を殺す短歌を詠みたいと誓って頬張るアメリカンドッグ
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寒くなり なんだか急に 食べたくなる ほっこりした味 みたらし団子
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小閑を盗みて歌を詠める時けふのあはひに色にほひそむ
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雨音の聴こえぬ闇に寝覚むればぽつんと世界に雫落ちゆく
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七色の旗のはためくこの街にいろいろなるひと虹追ひかけぬ
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雨の降る九月に傘は置いてきた青いインクで手紙を書こう
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田んぼには本当に雀が来るんだとおどろくわたし 苦笑いの君
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何もかも誰かが全部しておくれ めんどくさいよ ダルいよう うぅ
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1号館、柱の陰に白毛玉 水をあげよう夏バテの猫
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古本に学生時代を懐かしみ 棚に戻して本郷の町
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泰平の天下国家を策そうぞ 友の首をも生贄として
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肌寒いオフショルダーのワンピース 上着を忘れくしゃみを一つ
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