上るたび別の用事をやっつけて果たさず降りる無為の階段
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林檎食う くしゃりくしゃり 咀嚼の 寂しき生物 われに息づけり
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暖かい麦茶もいいが焙じ茶を買おうと思う薬缶やかんを火にかけ
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初冠雪 そんな時期かと山見上げ 我が子の冬着なきことに気づく
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寝床にて母は布団を引っかぶり タヌ猫、いそいそ入りにゆけり
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秋の朝 ひんやり空気のリビングに ミルクカフェオレのあたたかな湯気
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雷門しっかり見張れ風雷神 ヘソ出しギャルやスリ痴漢
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心降る 長雨つづく秋夜長 空いた穴へと 流れて何処へ
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雷門仁王門潜りて大いらかそのした鎮座の一寸八分 (御本尊)
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歩こう会山路かさこそ鳴る落ち葉毬栗いがぐり転がる木漏れ日のもと
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草刈りに払う機械の手が止まる小花一面地獄の釜のふた
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赤ちゃんに 戻ったみたいね お母さん そうして生まれ 眠りにつくの
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ヨコスカに土日は多し美国アメリカ人食堂に入りて日本食このむ
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朝夕にオリイブ塩漬けビンの味よくよく見れば西班牙スペイン の味
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駅前でがなり立ててる候補者あいつらを駆逐するなら一票入れよう
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演劇部サボって友と帰る道チャリで爆走明日がこわい
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ユダヤ民 エジプトにまけ ローマにまけ 東欧ドイツも しかえしパレスチナ /ポグロム ゲットー アウシュビッツ
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晩秋の雨が静かに降りそそぐ貧しい街に灯のともるころ
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うまれきて こどもの無心 しょうじょのゆめ あいのしんじつ うばうせんそう
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布団からはみ出た足の寒き朝ねじ巻き時計の音のひそけさ
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雨がひとつ ふたつみっつ 落ちてきて なぜ?の嵐 そんな午後
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白い光 ふっと世界が暗くなった気がして僕の心は叫んだ
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鈍痛。倦み疲れ病み、脳を刺す。右の眼球にどろりと血流。
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忘れてた君の季節が来たことを ひどいさよなら忘れてないよ
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痛点のない腕が欲しい夜もすがら君を抱えて眠れるように
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愛が重、いんではなくて、愛されな、いと死んでしま、う生き物だか、ら
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全身がささくれになり薄く皮を剥げばなんにも残らない俺
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白い息 夜空の星を 鮮明に 彩り雫と なって落ちゆく
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恋ならば 好きでいられた 愛ならば 嫌いになれない 君を憎んだ
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生保でもなぜあの人は贅沢を?ただ網の目をくぐれない吾
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