一枚の証明写真印刷されひとつにしてひとりならざる
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よんさいで 吹き矢のみこみ 窒息し そのご六十年 ながいゆめ 余生 /歌で個人史 過去歌
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数合わせ 一夜限りの うたげにて さかずき交わす 名も知らぬ人
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遠浅の渚ようやく指さきをつめたく濡らしじっと手を見る
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祈っても助からぬもの祈ってもこぼれてしまうじっと手を見る
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あらっても落ちない血のり太陽にこわごわ透かしじっと手を見る
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お廊下で ニャンニャン呼ぶのを聞きながら 高速でオフロ済ませる ねこ母
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マフラーを手繰り寄せている十一月    オキシトシンを享受させてね
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温かいスープに浸かる 鮮やかな色とりもどす 野菜みたいに
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甘酒は砂糖控えめ母の味 粕と生姜がじんわり沁みる
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キス顔の練習してる鏡の前 視界のすみに母親の視線
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切先を自らの喉突きつけて普通を語る人の危うさ
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色と匂いのついた湯のなかにて 飛び石ならではの疲れを癒やし
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おのおのが 不平不満を 持ち寄って 焚き火にくべる 金曜の夜
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夕暮れの雪明かりする帰り道等の町にも降っただろうか
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勤労感謝の日は過ぎキッチンガーデンは更地となり春まで休園ならむ
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かたい蓋おひとりさまの馬鹿力 この世の悪を倒した感じ
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歩めども 重なり合えぬ影と影 やがて日暮れの闇に抱かれ   
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君の赤私の青がまじりあい紫色の夕陽眺める
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見て見ぬと言うのではなく最初から見てはいないと自己暗示する
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にいちがにににんがしにさんがぱちん サイダーの音はじけて消える
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戦争にだってルールが必要だ拾う破片に反射する赤
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悲しみは 時の流れに 癒されず 質変えながら 心にとどまり
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散り果てし柾木まさきかづらくる人もなき山里に月とのみすむ
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水筒から立ち上る湯気=イコール外で感じる家の気配
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「ホッカイロ買い足したよ」と母からのメールには誤字「春を多めに」
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雨上がりきれいな虹を見上げれば明日はきっと素直になれる
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「もう負けねーし」という君の雪を踏む爪先から星くず
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偶然を装いあなたに会いに行くもらいタバコのパーラメント
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保安所の不在は窓にあらわれてやすらぐだろう警報ランプ
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