桜道 僕には切ない 景色でも 君には綺麗な だけなのだろう
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気が引けて東北だけどほぼ無傷ぞろぞろと来る列を見送る
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車椅子荷台作ろか嵩の張るおしめ要るだろ寝たきり避難
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青白き炎だけを母親の代わりとし 送電再開をしばし待つ
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「あの日」はさ 生まれたばかりの 僕たちで 思い出せない 少しの悔しさ
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遅く起き 溜まった通知を 消していく 君の言葉は 急ぎ返すよ
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この冬の 雪散りし空 暮れなずみ 家並みの淡く 春待つ夜よ
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犬を連れ朝の日課の散歩では話す知り合い二三人増え
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水跳ねるプールの泡もすぐ消えて爽やかさだけ光と残る
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どうしても一緒にいたいあなたの前で「消えろ」のとこが歌えなかった
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年度末旗振りの日はまだ寒く向かいのママは知り合い多し
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「ただいま」に応える人がここにいることは奇跡と気付いたこの日
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十四年 辛苦抱えし 人々に 光の差す日 来るを祈れり
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今朝は雨 季節が進む 着実に 地軸のずれは 本当だった
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コチコチと 静かな部屋の 秒針の音だけを聴き 眠れぬ夜は
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遠友に 次の来訪 尋ねけり それにつけても 早期復興
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姪っ子の結婚迎え寂しくも願うは桃の夭夭ようようたらん
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終点で車掌に起こされ飛び起きる車掌もたまげて後ろへ下がる
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杖つきつ施設の妹見舞う姉に車椅子より怪訝な妹
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みづからのうちよりあふれくるものに苦しんでいるあなたは詩人
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同時代 同じ日本で起きたこと 二万に近い同胞の死は
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あと五分 微睡まどろむ中で 感じたる ベッドの下で 寝ていた君を
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あの時は和歌山にいた私さえ どすんと感じた巨大な槌を
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としつきに かさねかさねて いたみては はるけきうみに けふあめのふる
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家ありし瓦礫の山に立ちつくす声なき吾に雪吹きつけぬ(2011.3.11を偲び)
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朝起きて 今日も元気に動きだす 空元気でも カラッと元気!
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早起きの春に支払う三文は 神酒と祈りと朝摘みの花
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桜待つ、待てど来ぬ君、いつの世も、想い届かぬ春の夕暮れ。
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原発に依存してゆくジレンマのけふの電気をしずかにつける
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それぞれの震災あとを見つめをりたかが記念日されど記念日
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