上司には「はいそうです」と頷いてつまむ海鼠なまこに歯ごたえのあり
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自分で煮た大根がうまい いいんだいいんだ まだ生きるんだ、たぶん
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宵闇のテントの内で聴き入るは絶えずしてある往く川の流れ
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旅先の二日目朝の靴下に今はもう居ぬあの子の抜け毛
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あまりに仕事できないの プライドないの なんもないの なのに、いきるの
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私如きに泣くな いつかお前が私を軽蔑する日を願う
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火曜日の化膿軽んじられ過労相当徒労とうとう嘔吐
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「あとがき」が自己紹介になってゆく「著者紹介」はどうすりゃいいの
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後先は考えすぎると破滅する 蝉も衝動的に羽化する
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朝食べたベーコンエッグの気持ちを サンダル履きの素足は知ってる
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皆と会ひ不思議な力を得たり 嗚呼は約束に生かされてゐる
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もう逢えない 分かってるけど でもでもね もしかしたらと 思って生きてる
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ごま油・塩だけ混ぜた キャベツサラダ ごまをかけすぎ ごまサラダとなる
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蓮池に巣を張る蜘蛛よ我に住む犍陀多カンダタに糸を垂らしておくれ
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簡単に夜の食事したくを終わらせて  そこから始まる短歌うた詠む時間
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去年より嵩張る箱に詰めし飯きれいさっぱりお上られけり
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あの夏に彼と出逢った 一生分の幸福しあわせを手に入れてしまった
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暑くてもしっかり湯船につかかります ミントの香りからだ ほぐれる
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どの庭も ユリが楚々とし 立ちあがり そばかすだらけは ご愛嬌にて / 北の夏
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やりたさのまえにただしさになんのいみがあるのあとは余生 / 蝉
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改札を 無音で通る それだけで 大人感じた 12歳春
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夜を超えて 見返してみる メモ書きの 飛躍を埋めて 午前が終わる
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黒糖のサーターアンダギーを食む いつか揚げたて 食べてみたいな
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なにがしか めずらしおやつ 食べようか お茶でも淹れて 気分転換
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タンクトップ ねこを抱きしめ 毛だらけで 取るひまはない いままた抱くから
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書きもしないのに日記帳の鍵をかけることばかり考えている
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君の手がなぞれば線が現れてそれを眺める私がとなり
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夏の暮れ「どこで道を違えたか」路傍の地蔵は何も答えず
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かくめいご どくさいせいを ひいたくに ふしぎなことに 王様をうみ
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ずいぶんと遠回りしてたどりつく負の感情は空腹育ち
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