ブレーキをかけるぎこちなさで測る 今日の運転士の経験値
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知らぬ間に食器を汚すスポンジ 一週間の爪の伸び率
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窓の外菊に牡丹と見惚れては ポールを揺らすS字クランク
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〝しなかった後悔よりもした後悔〟 無責任だね どうしてくれるの 
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恋なんてしてはいけない歳になる熟れた果実は土へと還る
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去年より量は減ったが料増えた嗚呼七月の電気料金
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この街は夜でも人が多いから 薬指を光らせていてね
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火災あと供える物は四葉の葉 それの言葉は知らぬが仏
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夢の中 あなたに会って 目を覚ます 大丈夫だよ 忘れてないよ
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イヤホンが絡まりに絡まった 私の気持ちもほどけてないのに
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もうこないからねーとまたきたよとを 君と会う数ぐんぐん増える
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ビールばかり見つめている君などは酔って変な事言っちゃえばいい
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ロックスターにはならないで27歳で死んでほしくないから
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不器用な君が 手術みたいに切る羊羹 あぶなくて 愛おしくて
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「月が綺麗ですね。」へ贈る返答を添削する夜 予定はまだない。
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芝を敷く庭の青さに愛犬の白さが映えて美しい午後
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メタファーのようだと思う十八の日々 蝶々の抜け殻に泣く
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二年後は お酒を持って 会おうねと 揺れる制服 手繋ぎ笑う
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料理する 君を見つめる 私の目 涙あふれる いなくならないで
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木と水の湧き出るような自然から吹く風抱いてたくさん眠る
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整理して片づけられた椅子たちのドミノのような深い沈黙
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背伸びした夏を追いかけ贅沢な木陰を以て青夏となす
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普通なら喜ぶようなケーキでも君がいないと無駄なスペース
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重なったミルクレープの層らしい甘く積まれた眠りを求む
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参ったな似てもないのに銀幕の女優が君に見えてくるんだ
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ふざけずに頑張っているこの頃は夢まで真面目 ちょっと萎えるわ
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「あ、満月」 君は好きだね 夜の月 月の満ち欠け 少しづつ覚えてく
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失敗は瓶にでも詰め海流し雷鳴らす頭上高くに
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空席が増えるばかりの脳みそでもう戻れないと咽び泣いた
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君よ、死ぬな。僕の心に椅子はもう置けない。ずっと座っててよ、ねえ
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