文鳥が肩から下りて邪魔をするキーボードの上にふんもする
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「お茶でもいれましょ」と言ったのに「お茶がはいりました」の言葉やさしい
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存在はいつかやぶれてしまうもの それならそれであだし野の露
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くっきりと 流れる雲見る新月の下 鈴虫の音が思い出せない
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スーツケースの車輪に桜貝の欠片  結露の窓に太陽を描く
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自転車で坂道下る帰り道そろそろ上着いる季節だなぁ
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思ったより深く皮を剥いでしまいました 私の身体でまだ
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あきかぜに 名知らぬはなと あさがおは ゆれてバイバイ バアバをおくる
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文字だけでぎりぎり繋ぎ止められてる まるで短歌みたいな恋だね
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逃げ道寄り道行く先はどのみち暇つぶしだけが人生か
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木を植えし先人達の声響く枝葉のこちらも聞こえてますよ
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笑わせてくれようとする人がいて 優しくて涙出ちゃう言わないけど
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夫にも友にも本音は話さない 何を守るかわたしの堰よ
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普通の子羨ましくて眩しくて 吾子を蝕む毒の愛情
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暇つぶし息子と象をデッサンし出来映え見せ合う土曜日の午後
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まだ何も終わってないのに谷底の 闇を見つめて身を乗り出せば
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死にたいなぁと撫でる手を 舐めては我の顔のぞきこむ君
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紫の芍薬を焼べて動かす器は空焚きでも前へ
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惜春の意味を調べ春は昔から大層好かれていると知る
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さあ夜中思う存分筆振るう猟奇趣味とかグロテスクとか
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精神の衛生上によくないよ『怖い短歌』が僕を悩ます/面白いんですけどね
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美しく優しい歌を詠いたいされど我が脳命令拒絶 
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グロテスク描けば右に誰も居ず読むのがキツい日野日出志筆 
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呪われた子守唄詠む狂人が「君は必ず三日後に死ぬ!」/日野日出志『地獄の子守唄』オマージュ 
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もう少し手が長ければ背を撫でて一人でも生きていけたかもしれん
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血の涙流し半紙に「みなごろし」四肢なき娘筆を歯で噛み/三池崇監督『十三人の刺客』オマージュ
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血に飢えた暴君家臣の首蹴って刺客にやいば突き付け嗤う/三池崇監督『十三人の刺客』オマージュ
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泥まみれ命乞いする暴君が今わの際に「おもしろかった」と/三池崇監督『十三人の刺客』オマージュ
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茶に透ける小瓶全ての錠剤をひとり飲み干し自分終わらす
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夜に来る憂鬱の処方箋がただ眠ることのみって心許なさ
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