「来年も 一緒に見よう」って言ったじゃん 誰のせいなの 用無しの浴衣
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壬生駅の 前で撮った君のソロチェキ 色が枯れてく もう会えないね
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降りてくる 浴衣姿に 目を伏せて ズボンで登る 駅の階段
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捕まらぬ銀河の魚居ぬ鼠飽きてこの手に降れフェリス
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生きようと頑張れるならこれくらい長い抜け毛を集めドネーション
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悩みすら小さく思う 夏の夜の喧騒が秘める命の数は
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命など儚くはぜる音だねと伏せる目照らす殺虫灯の
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あの頃より強くなれないの知っちゃった だって何回やってもだめなんだもん
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古本の値札を剥がす指先にきみの仕事の正しさがある
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幸せな恋が実って愛になる♡ だけど違った片思いだった
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1ミリもない力こぶを見せつけて やるぞやるぞ私はやるぞ
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義憤ゆえ石を投げては糾弾し 変貌していく悪鬼の如く
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前向いていなきゃいけないのならあなたがいる方を前としよう
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障害者手帳の相談したあとにオーロラグレーのマニキュアを買う
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生きている証しと詠みし歌なれどすべて消したき朝 歯をみがく
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アルバムの古い姿を懐かしむ そんなの嫌だと自らに課す
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十五時になりて覚醒 蝉の衆 尊き夏の尊きいのち
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白飯にイカの塩辛ちょっとのせ煎茶を注ぐお茶漬けが好き
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綺麗だと 言わなくていいから君の 運命の人は僕だと言って
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君がいた 十九の夏は楽しかった 明日二十歳はたちだよなんでいないの
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いつだって通知も瞳も見続ける ずっとずっと待っているから
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会いに行く 横須賀線一時間半 大事なものを幾つなくした
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「もう一度やり直そう」と打ちかけて スワイプして飲むあの日のスミノフ
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贈り物 みかんジュース残り一口 飲み切らないまま君とはお別れ
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見返ればる愛を知るベランダの夕には眠る金魚の浴衣
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もう君とこれで終わりと気づいても またねと微笑む夜の駐車場
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多分もうあの熱量では愛せないよ、「それでもいいから」って縋ってよ
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つかめそな綿雲つふくふくと朝の青田を覗き込むごと
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田舎だからって牧歌的であるわけない 煮詰まったなら人は狂うわ
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ヒグラシの月に向かいて歌ううた 黄昏時に切なくひびく
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