忘れてる気がする帰るべき場所を かんばせあかく染めて残照
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開かれる紙の扉の向こうがわ 山手線が雨を聞いてる
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清潔な真昼のテレビは被害者を無限ループで殺し続ける
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顔をあげ誇れにきびの傷跡も あばたの梨の甘き香りを
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過ぎ去った暦の薄皮ひとつ剥き雫滴る葡萄の九月
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潔く晩夏に散った虫どもを無粋に弔う青き冬瓜
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明瞭にすれば痛みと呼ぶ疼き 優しいだけならバファリンでいい
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ギヤを上げ加速していく直線は次の夏までつながっている
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常夜灯 いつからお前はいやらしい女を照らす光になった
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君はいま迷うことなく片翼を広げて飛んだ 空は嵐だ
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初期化せず去ったあなたの指紋しか認証できないわたしの身体
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百年の醒めない眠りのぼくらまた百一年目の恋をはじめる
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原罪を犯さぬ卵三個割り甘いわたしの堕天オムレツ
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傲慢であれ塩素系漂白剤 苛烈にすべてを白へと戻せ
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泥と汗 祈りのように染みついて けれども夏はかならず終わる
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カンバスのように端までぴんと干す 明日を描く白いTシャツ
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差し掛けた傘の朱のした水鏡 経帷子のごとき白無垢
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後ろ髪引く手を断ちて花嫁はあらたな産着の白無垢纏い
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ゲームしてカップ麺食みラインして罪悪感蹴り 朝ぼらけかな
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「我こそは地球防衛軍一号」と 仁王立ちしてリングプル外す
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星たちと砂丘をこえる隊商キャラバンの足跡というアンダーライン
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教訓だ、学ぶはずだというけれど 思い出すのも難しい過去
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童貞を取り糺された夢追いびとに破かれたなど言えぬストッ
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絶対無理のアラームが改札もろとも告げていく。失恋なのか
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硫黄泉 体に臭いが ついていて 不潔じゃないの 心配するな
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寒がりな 親父がくしゃみ 出てばかり 鼻に来そうで 驚くあまり
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嫌われた目も合わしてはくれないで恋の終わりはくるくるキャッツ
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間違いがそもそも元よ探しもの檸檬はぎゅっと絞り続ける
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顔を上げ壁を乗り越え見下ろして一歩踏み出し世界は逆さ
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雪なんて降るのか肩に二人ならきっと並んだ冬の道だよ
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