湯西川平家の武者の隠れ家は辿るに難儀の細き道つづく
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東京には本当の空が無いと言う留まり知らぬ大気の汚染
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旅の宿しとねに座り書きつける今日の見聞きを三十一文字に
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東雲に奈良の山々際立ちて 空は薄紅 霜月の朝
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戯れ歌に黒人奴隷ありきその豚より易き一ポンドの労働契約 
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諧謔と深刻の差も知らぬまま浅き酔ひに酔ひてを歿日いりひ
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老いた躯の フワフワな毛を 撫でている 白んだ眼まなこ  置いてかないで
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突き詰めれば私は分子と原子からできているのだ アンパン食べたい
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資本てふ怪物サトゥルヌスに肖てみどりご喰らふ扁桃花もろとも
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無骨な手  形の良い耳  丸いケツ  背中のくぼみ、 貴方が好きだ
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冷蔵庫 ドアポケットに 貯まってく あなたに貰った 飲み物たちよ
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密室劇。誰が争ひ誰が撃たれたかなきがらの兵卒三つほどかさなりぬ
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民族的忘却の末四月尽のハロウィン。ヴァルプルギスが衣装ぺらぺらの化学繊維の合皮
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湿気た朝に饐えたゴミ袋が固まって 天に召されるのを待っている
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のどいたい さむけもしてる かったるい にがつにかった かっこんとう効け
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こうじつは なんでもいいの じんせいに あんなひこんなひ おもいできざむ /こころのあるばむ
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九時ニュース キー局 国営 なんかより ひるのワイドが ふかくて多様
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満月の見下ろす夜更け 足元を走るネズミを眺める男
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皿の上載せた哀れな醤油味の魚の目玉を舌で転がす
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まあ結局、知らない人だ。墓石に薄く残った祖父の祖父など。
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三日ならさまになるけど当日の記憶も保たず日記は買わぬ
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カレンダー数年おんなじ猫がいた今年の百均新猫登場
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注射した腕ではなくて指のほうぴりぴり痛む抗議のように
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猫はみな喋りたそうに振り返る私の心見透かすように
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iPhoneがFor Youと押しつけてくる幸せだった頃の僕たち
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ハロウィンの 次はクリスマス 除夜の鐘に 初詣の国 節操のなさ
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ハロウィンに浮かれる輩わが国の新嘗祭で感謝を示そ
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君想ひ 眠れぬ夜に 恋を詠む 心騒いで さらに眠れず
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大半を離れて暮らす母娘なり親となりて五十年目が迫りくる
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十六夜の月に寄り添う木星のような十六のころの初恋
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