春節の 千歳緑は梅雨を呼び 蒼く茂りて 夏は間近と
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真夜中は 空気が薄くて 苦しいの あなたの酸素を 分けてもらうわ
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洗濯機回す義母の葬儀前働き者の義母に似た妻
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「夫」とか「妻」とか呼べる人をもつ人たちの国でしたねここは
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見回せば周りがみんな既婚者で、鯱の魚影が横切ってゆく
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高慢に見えないように卑屈にも見えないように座る練習
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二人とも最後になると知っていて、観光地往く「わ」か「れ」のナンバー
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海底の真白き珊瑚悲しみて真珠は落ちる 人魚の墓場
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失敗をいっぱい詰めた一杯で開けっぱなしの夜に乾杯
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わかりやすい肩書が足りない分を笑顔で埋めざるを得ぬ日もある
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どこまでは話していいか脳内の発火が加速してゆく「雑談」
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りんなちゃんGPTはどうなのとおずおず聞けばいい感じらし
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きっとだあれも分からぬと思いながらも通じる不思議
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両の手に掬えるだけの幸せじゃ満たしきれない時代の渇き 
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ひこうき雲私のおりを乗せ忘れ三つそれぞれの空へ消えた
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情報に囚われ言葉見失う 愛なき世界紡ぐのは誰
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陽だまりの屋根奪われた猫達が今日も立ち寄り宙を見つめる
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あ、そうなの そのあとひろがる沈黙が 空気を徐々に満たしていく
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春半ば 死絵しにえ描かれし 役者あり 左團次丈の 軽妙忘れじ
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目玉焼ききみのぐあいはどのへんがいいかわからずつついて漏らす
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眠すぎて頭に何も浮かばない 最後の14字詠めずに「おやすみ」
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困っても手近なもので危機回避なんとかなってしまう貧乏
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見えないし聞こえないので見返して聞き返しては組み換えしてく
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人生の間違い探しクイズなら多分優勝できる気がする
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絵本では星と話せる森の木に聞きたいきみのいる星のこと
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砂浜や山や林や高層のビルやホームで 最期を思う
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方舟に選ばれたのならそこから沈んでゆく私を見ていて
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JR 錦糸町駅 南口 スーツと制服 夢は値が張る
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置き捨てた制汗剤の缶のなかあの青春の気配は残る
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無風から向かい風へと蒸し返し謀反人らは群れだちてゆく
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