僕ですら知らない僕の所在地を この世でひとり 君だけが知る
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街灯の数ほど影は我に副ひそのうち一つのふと振り向きぬ
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桃を食む君の笑顔を想ひつつ僕は売り場をいったり来たり
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還りこぬふるさとのすべて託されて 小さな宇宙を立ち上げる
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死にかけの父の長屋の住人が おっちゃん元気かと声かけくれる
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カーテンの透ける光をつかまえてめぐる思い出明け方の夢
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のり弁と洋食弁当ちと悩み「あ、ダイエット」サンドを選ぶ
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道端で寝ているような蝉たちは何年分の夢を見ているか
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少しずつ恋の魔法が解けてきて 心の奥にただ花の咲く
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もう一度 生まれ直せと言う彼の まぼろしのそばで泣いていました
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背負い切れぬ思い降ろして摘みあげ  扇風機にでもかざしておこう
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どこまでも君と私は //平行  ≒ ほぼ等しく ≠ 等しからず
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みんなして足並み揃えて明日へゆく遠くの灯りへ「おやすみ」を言う
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過去なんか振り返りたくないんだよ 「そうはいくか」と リレキショのやつ
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やはらかに頭蓋の内にゆらぎつつわれら物体として個なるも
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その下に湖はあり奔る雲 照り返されて時を越え行く
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このごろは土這う草も愛しけれ 旅は終わりて地は丸ければ
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地上は静か野山は黙し 陽だまりが旅人のようにさすらう
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森の奥 部屋の終わりと始まりのあわいを忘る廃屋のあり
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ドアノブの銀色きらきらきらめいて冷たさしめす首筋だけが
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扉開くそのとき夜は降りてきてとばりを破る獣が叫ぶ
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何気なく窓の向こうと見比べる七〇三番ランウェイヒット
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紙パックたたんだ先に感謝の字こんな世界になればいいのに
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棄民して メダルよろこぶ 愚か者
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バンザイと叫び線路に身を投げた令和三年八月の虹
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G-SHOCK 僕が飛び降り 死んだ後 君だけはまだ生き続けて
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君の心を通りゆく風思う 絆創膏は重ねて貼れぬ
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夜に糸の絡まってひとすじ落ちる僕の祈りのたよりなきこと
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揺らぎいる哀しい予感祈りをり貝の風鈴小さく響く
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叫びたる鋭き獣棲むわれにコーティングする無害な糖衣
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