春風に無色無臭でけるに散りゆくことが将来の夢
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会議室独りで借りて靴を脱ぎ床に仰向けあかり眺める
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ベランダでとろりと微睡む陽光の春はる遥か空は晴ればれ
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桃色の梅の木に咲く緑の葉 感じる春にちょっぴりブルー
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寝てる間に切り裂いちゃってゴメンナサイあなたの胸の内知りたくて
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動物が不思議な仕種をしてるときだいたいそれはいのちの営み
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いつかした君とのキスは時間差で苦く感じる 目薬みたいだ
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春先の朝の寒さを集めては年度の終わりに来たる寂しさ
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冬過ぎて春来たるらし憂鬱の今日もブラックサンダーを買う
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最後になると思っていなかった「またね」 別れのときは遠雷のごと
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薄水の明けの先触れの風誘う花より軽い「早く死にたい」
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段々と密集度合いが詰まりゆく  建物眺めて都心に近づく
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焼き魚臭い少ないグリル焼き片付け楽なフライパンかな
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寝る前に家の戸締り見て回るかすかに漂う夜の焼き鯖
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魔法瓶故障発覚気が焦る今時いまどき店に有ると限らず
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死亡記事先ず年齢を確かめて年下だったら勝った気がする
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公園の雑木林の木漏れ日を歩いただけでそれでいいよね
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不安とは抑え込んだら膨らんで破裂するからたまに吐き出す
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苦笑い 急ぎ足で 駆け抜ける 病が友を 遠ざける
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若き頃 心ときめき ドキドキと 今は哀しき 不整脈
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早朝に録音録画鳴く烏手待ち時間が長く感じる
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お前たち曲芸団の団員かやってはならぬ皆口そろえ
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泣く暇も 落ち込む暇も 今は無し 生きる術と 心向き合う
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治療中 落ち込む間なく やまい増す 心の臓は いつも駆け足
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此処にある誰にも似ない傷ついた一点物をわたしと呼んだ
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「あたりまえ」のことやるだけがしんどい日もありますわなそりゃ。一緒に歩こう
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バイバイと手を振ったあとドア越しの 発車する前長い一瞬
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冬囲い 解かれた枝は跳ね上がり 雪の飛沫が春に煌めく
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寝ころんで本を読んでいる イカルスのように飛ぶが危うい
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蒼穹に白い雲 枯れ山の奥から声が聞こえそう
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