カーテンの裏に 夜な夜な降り立てし ひとの匂ひは 金木犀で
3
今ここで列を抜け出せるか否か。或る簡単な指標としては。
0
曇天の 清里の夜を のぞき込む 夏の宿題 手の望遠鏡
1
居間の床 仰向く僕を 寝床とし、 微睡む猫の 重み、温もり。
1
接客をいつもどうりしていると目がバキバキの茶色いおじさん
0
夕焼けは美しいのに振り向けばバカデカ影でちょっと楽しい
2
診察と納品兼ねて病院へ 血圧手帳も台車に乗せる
0
ワンピース白い花咲きひるがえしブーツの踵鳴らす草笛
0
美しい線をえがけと震える手 心が揺れる 惑う爪先つめさき
0
死にたいと言えば何故かと泣く人がいない沖なら息継ぎできる
5
給付金配る以外に能がない政府よ もっともっと出してね
0
人の死を自分の手柄に利用する 眼鏡野郎の薄いくちびる
0
防衛のために手にした武器であれ 戦争以外に使い途なし
0
踏切や西へ東へ見送って 開くの待つわいつまでも待つわ
0
祖父の背が 語り尽くせぬ言の葉で 秋の並木に 彩りを添え
5
歳重ね 幼年期から追憶し 残る思い出 無始無終かな
2
「内心は自由」を要は「黙れ」という意味で使っている人がいた
0
土砂降りの雨からきみを守りぬく屋根にわたしはなれたでしょうか
4
さみしさは空の高さと絹の雲 きんもくせいが歌い始める
5
人多き綜合病院の待合は 仲睦まじき老夫婦あり
0
どのようにその素晴らしい文字列を作っているのだ画面上の君
2
下々に娯楽をやろう いい人になったかのような気にしてやろう
0
イラクから 二十年たちウクライナ 消費期限の都合なのかな
0
お隣の赤いトタンに滲んでく  屋根は夕焼け 夕焼けは屋根
10
いつかまた戻ってほしい本にだけちいさく犬の絵を描いて売る
32
戦争の正義は常に勝者側 敗者は背負う 罪と賠償
0
二階からクレーンで吊られ冷蔵庫 十年戦士秋空を舞い
5
冷蔵庫消費期限の数字でも祝福溢る君生まれた日
15
千切れ雲家路を急ぐ朝六時 倅は初のバス旅行なり
5
何らかの儀式のために集まると、人はもれなく「野蛮」に見える
1