あの頃の自分が死んだのと同じあの人もまた死んでしまった
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もしもこの世界が全部現実で逃げられないと言われたならば
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ちかちかと蛍火やわく辺りを照らしてる 豆電球が恋しい
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この家は透明な檻のようなんだ呼吸できずに胸元つかむ
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つり革にぶらさがつてひたと思ふ嗚呼彼女のストラツプになりたし
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食べる手が止まらないから袋開け私のお腹は不安でいっぱい
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箸といふやさしき道具たべものをきずつけぬままふはりとすくふ
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「ガタンゴトン」じゃなくて「スドッドド」なんだよ  幼子大阪環状線にて
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明日こそあなたに逢える そんな気が私を捉え離さずにいる
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遠雷えんらいに震えてしまう 階段を上がる音に似てるから
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景色が早送りしたジャングルジム 「キケン」だから太陽に溶かされたらしい
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指先であふれることば紡ぎあげいつしか蜘蛛のいとにとらわれ
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子猫を包んで舞い上がるカーテン、しわの寄ったベッドでくしゃみを三回。
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慣れないヒールで爪先が痛いポケットでLINEラインすずやかに鳴る
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自分自身の醜い部分と向き合わずラクしてる人が許せないのかも
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きざはしを寄せ集めたる彼の人のメールマガジン遺骨にも似て
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もう既に失恋してるようなものなのに諦めきれずにいたり
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この先は誰かを殺すだけなのか 他人ひとか自分か ノーモアもういやだ ソーメンそんな男でいることは
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静かだと思えばそれが増していくわたしの城には誰もこない
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熱すぎるうどんとコーヒー流し込み明日にさよならしましょうね
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履歴書の真白い枠に向き合ってもう何度目かな私の人生
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指先が冷えてシーツを泳ぐ真夜中に 光る画面に手を伸ばす
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あの頃は便器に吐いたブルーキュラソーにさえ星を見つけられた
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煙草はこうやって吸うのさほら見て 換気扇の音が響く夜
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夜の冬浮き足立てる梅の紅嫉妬隠せぬ白木蓮よ
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誰にでも見たくないものはあるものあなたはひとつ煙を吐いた
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いつからか取り除きたいこの気持ち値段シールの粘着は残り
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箸落とし拾ってあげてまた落とし皺くちゃな手老いた母の手
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よのなかはあそびをせんとや生まれけんかりがねわたる浮き雲の空
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春となりお台所も水ぬるくゴム手袋も無用となって
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