乗り過ごし一人で駅に残されて終幕あとの寂しさ覚ゆ
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あのころは一緒に行けると信じてた 気球の旅へ 緞帳越えて
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エレメントたる蝉の声捨象してどこを撮っても夏しかいねえ
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涙跡見せたくないのはプライドの高さじゃなくて強さと言って
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泣きながらイヤホンで聴く音楽はいつか私を助けてくれる
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何見ても何を聞いても何してもずっと想っている人がいる
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雨やまず やがて視界のまつしろな頁と化して捲らるるまで
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天晴れて光射せども心死し ただただ風にうたれるばかり
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物語フィルムはすでに巻き終わり 亡霊の如く我ら漂う
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みなが皆オードリー・タンな訳でなし私は静かに暮らしたいだけ
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発想が 石ころのよう 固すぎて 水と相性 悪すぎかもな
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人間を やってるうちは 矛盾あり 悩みも多く 間違いだらけ
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型どおり 生きてるうちに 型になり 無味乾燥な 機械のように
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理由なき 不安に怯え 閉じこもり 鬱鬱として 青春過ごす
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その手から寄越されたのは一欠の「愛」と名乗った心の一部
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幸せと 不幸はいつも 裏表 一瞬にして 裏返るから
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屈辱も 恥も非難も 抑圧も 耐えてゆくもの 生きるからには
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ニコニコと仮面のように張り付いた 君の笑顔に素顔を探す
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一輪の おしべ残したカサブランカ ひときわ散るのが待ち遠しい
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蝉の声 焦げて潰える音に似て 病棟個室にあなたがひとり
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村上に水良き小さな井戸ありて ころころ奔る小川の夢見し
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青雲と光の中で雀鳴く100万円の目覚まし0円
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とらわれの銭湯民族 証は手首にある 鍵のブレスレット
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なぜごみのなかで生活しているのかと聞かれたが ただ寂しいだけ
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キャッチャーの 同意を得ずに ピッチング あゝエゴの塊片想い
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午後8時 ラムネの瓶底 西の空 シュワっと消える 短い魔法
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希死念慮 病気になって 知った言葉 私のせいではないんだ
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帰宅して 冷えたビールを二本供えて 私もゴクリ
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どうせ今死にゆくならば 抗わず (あの時死んでおけばよかった)
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半ば幻なる他者のさはさはと脳裏にさざめきながらまた夏
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