金なんてとっくのとうに使い果たした 今日も晩飯は並ばぬ食卓
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ふと触れる 肩には春のひと吹きなびく 誰もしらない花弁のゆくえ
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言えなくて手紙を書いたことがある ちり紙にしてすてられたけど
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なぞるのは見えない君の輪郭としあわせ探す私の感覚
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春先のほのかに笑んだあたたかさ それは昼時の微睡みに似た
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悲観して貶して沈むようなひとくるしいだけで生きてはゆけぬ
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まだ起きている子が目あきて見る夢のうさぎの尾には甘き味あり
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明日もまた馬車馬のごとしの更けに灰皿につ灰がこぼれる
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春の雨 モノクロームなこの街を私は今日からふるさとと呼ぶ
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枯枝に番いの鴉寄り添いて 間近でみると可愛い貌だ
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バイロイト「指輪」ラジオにながれつつ煮しめくろまめ炊く年の暮れ
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多分今観音坂に生かされて走れと背中を押された気がする
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君を知り綺麗になりたくなったのに、嫉妬が私を醜くするの
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何もかもあの日から全て狂ったやり直したい君を知らずに
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どうして 君は私を選ばない、何が違う同じ女だろ
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君は今故郷のそれと笑い合い美しい夜を共にするのか
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字余りで短歌にできぬ記憶たち抱え過ぎゆく小竹向原こたけむかいはら
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パンケーキシュークリームにロリポップより甘ったるい夢を見たいこの夜
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なかゆびでかつてなぞれた左頬空中に描く輪郭の跡
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Utakataで短歌を詠んだ初めてのあの日の隣にもういないきみあいしてたさようなら
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ひとつずつ「小さな自慢」拾い上げでつつ歩く 行きつ戻りつ
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インスタInstagramに載せない夜に二人きり「いいね」も「シェア」も六畳の中
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例えたら簡単だけどその手間も惜しめないほど愛おしいだけ
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せせらぎにゆらり揺られて眠りたい、好きな香りとシーツの海へ
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香水はつけないと言う君、纏うムスクは誰にいつもらったの
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終章の言祝ぎを受くひとひらは死の瞬間の中蘊に舞う
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根拠なき俺流を信用する君はほんとうのばかだ  心中をしよう
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太陽のおもてのように燃え盛る世界のふちで喇叭が鳴った
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身をすくめジッとしてゐる里山の夕餉ゆうげの時の桜冷たく
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身支度がめんどくさくてめんどくさい めんどうだからでかけたくない
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