虹の根が地面に埋まっていないこと知っているから探しに行かない
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ほころんだ 雲の切れ間を かなたにぬける 鳥たちは どこかの春へ
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巡り来る 原爆の日よ 人々の 祈りの声を 渡らせ給へ
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ハモニカの音色はきっと寂し色さびしいろ 文学あたりを行ったり来たり
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髪の毛の分け目左に変えてみる女房気づかず五日目の朝
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朝から 口喧嘩する おれたちの愛と経済 切実よそに 地球ほしは回り続け
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大風おおかぜと打ち付ける雨ものかはと百合よ咲きぬけ二日の命ぞ/タカサゴユリ
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ああ、これは。 ビールにあう 音楽なの くるくる 舞う ひまわり うたえば
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恋に似た、されど恋ではないはずの この感情をどこに置こうか
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天国で祖父は再び丸く肥え 野菜の馬は恐れ慄く
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一色で己を解って欲しいなど三千年みちとせ生きてお言いになって
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極彩のロングショットの合間には染み出してきたあの日の陰り
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蓋を閉めないといけない夜だった もう日が昇ることのない丘
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野分立のわきだち すでにおほひし雲居くもゐよりまどあらましく打つ大南風おほみなみ
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どこからでも開きますとあるがどこからも開かない袋と格闘している
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ICの改札丁寧に譲りたるお嬢さん どうぞ次は貴女に
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同窓の 先輩に出す 手紙にて 猛暑に耐えてと 祈りを込める
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妻からの 娘の生まれし 写真見て 娘を抱きし 若き我見る
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うちからも線香ひとつなみなみとお水供えて長崎の地に
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くたばれと てめえの馬鹿面 見下ろした ケンカしたまま あの世へいくな
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もし僕が 大統領であったとして 後悔しない? ファーストレディ 
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「社長だ」と 店の女に 嘯いた 汚れた財布 不夜城の宵
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駅ピアノ今日はだーれも弾いてなく 「街角ピアノ」の貼り紙あるだけ
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ミッションはたいしたことはないんだよ 無事帰りつき また明日戻る
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それうまい? カップの氷味くらべ 舌の色みて笑う夏の日
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数分の 気持ちの振り幅 大きくて 嬉しい気持ちも こんなに辛い
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突風に 緑乱の竹林たけばやし 揺れ騒ぎ しずかに残る 青い空の穴
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わかいころ いきたくねえな で、バックレた いいんだ キャベツ 死ぬほど切るぜ
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君の写真、つい、見てしまって、口から溢れる「かわいい」の音
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をめぐり かへ家居いへゐあなぐるは つひにゆく道きたるときため
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