もう無理だ 逃げ帰ってはみたものの 後悔の糸 巻き戻される
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さざ波は僕の心の歯ブラシででも奥までは届いてくれない
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私は私あなたはあなたの悩みがありますねと会話している犬
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はチがつすすべテがこわれれてしまウ九月規律された生活
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認知症 変わりゆく母 これ以上 奪わないでよ 優しい心
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さしあふぐ 雲井くもゐをわかつ外國とつくにの み空色なる空色スカイブルー
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曼珠沙華まんじゆしやげ 赤く連れむ道のの 彼方あなたにつづく彼岸過迄ひがんすぎまで
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びゅうびゅうと 微熱を帯びた風抜けて 涼待つ心と洗濯物ほしもの揺らす
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ワンタンメンしようかパンケーキを焼くか 究極の二択?でもしんどいの
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やめるのも減らすも捨てるもさみしくて夏場の保存振り返る秋
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お月見の準備着々 月餅とお茶とお酒と 酒肴アテは何かな
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月見酒か 風情があるね 新米のお酒でないとダメなのかしら
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「あご、なでれ」のけぞり手足ものびのびと イニャバウアーと名付けたいねこ
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かき氷 やけに口冷たき 九月末 残暑戻りて 扇風機帰る日
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働いてTwitter見てニュース観てポケットのなかに悲しみいっぱい
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丹澤たんざはの 彼方あなたしづ夕影ゆふかげの とよ穗波ほなみに落つる金色こんじき
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そしてをとこゆレギオン、豚の群。悪霊は出で悪霊はガリラヤ湖に溺れて死にき
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スマホから少し離れて窓の外 月が明るい もうすぐ満月
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やわらかな君の心に刺した矢を抜くのはきっとわたしではなく
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雨だった 無視して帰る君の背に「ごめん」を言おうタイムマシンで
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何物になるかと夢見た幼き日 ここに在るのは何者でもない我
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楽園の強化ガラスを透かす月 古びたパンをも仄かに照らす
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ニンゲンがいなくなったら四つ足の添い寝をすべく窓越しに差す
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どこからが惜しまれる大きさの死か エタノールを手に擦り込みながら
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ありがとう 現地観戦げんちかんせん 最後の日 勝ち負けよりも 引退いんたい、泣くよ
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人間は思い出と出会いでできている だからどちらも大切にしたい
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あがいても何をしたって消せないよ 好きって気持ち苦しくってもさ
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欲望を 108叩いて 玉にして どこかに置いて 忘れ去りたい
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朝冷えがつらくなったら隣で眠ろう いつでもここにいるから
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ハンドルを握る手の甲を流れゆく街灯の影と掠れたラジオ
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