箱根路を待合室で観る三日襷が先か結果が先か
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隔離され手袋をしてトイレ行く検査キットは陰性だけど
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逆ならば子どもの世話が出来るのか いつもこちらがダウンでごめん
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麦の穂に身をつつむふたり雪のふる 蔵王のこけし静かに春まつ
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元旦に熱が出たから寝正月頭もたげる能登の地の揺れ
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えさをまく水の流れに憩う鴨 カラスは和のそとよこどるガキッコ
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兄弟や親との絆背景に仲間と繋ぐ襷の重さ
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ベンチにいるが心は海原へと向かう 氷川丸の錨にユリカモメ並び
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蕁麻疹で8年薬疹で10年母のアレルギー体質受け継ぐわれは
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ドラキュラでない私は朝昼夕いぬを引き連れ太陽にあたる
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元日の客待ちかねて早々とコップ一杯酒飲みにけり
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亡き父が丹精こめし白梅を元旦なれば玄関に置く
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元旦のまぶしき太陽目にしたる妻はおもはず合掌をせり
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泣けてくる 寒くはないか食べてるか 知らない人のこと思う朝
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近いから届けに行こうかこの水を 思いつつ見る水の直線
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想定やデーターを越え走る若者ひと箱根に起きる青の奇跡よ
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箱根路を若人達の駆け抜ける 地を鳴らしつつ風を切り裂く
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深爪とまつ毛にのった雪にだけ僕が泣いてる訳話そうか
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お年玉いくつも手にして吾子の子は チラッとママ見る小さき眼
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驚きて次に悲しいこと起こり 家族皆して寡黙な初春
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大地震七十二時間の壁迫る 埋もれる人の無きこと祈る
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日常と言う幸せの奪われし 北陸の地に雨降らないで
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帰省して「おう」しか言わぬお互いに言葉不要になるのか父と
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夜毎よごと襲う不安をはらう温かな朝日にそっと指をからめる
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夕焼けを背負った雪が着地するばあちゃんからの手紙なのかも
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凄惨な能登の街並み次々と余震に怯える孫らを案ず
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極端に近視の僕は「戻ってこい」と太陽に向かって叫んでいた
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古びたしおりを除け 林達夫の随筆essayを読む  嘆息しつつ
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天井に忍ぶネズミよ今日だけは、朝までずっと足音鳴らせ
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募る不安弱音を吐けば糸伝い、「ここでみてる」と網の先から
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