まぶたの奥の硝子扉を封鎖して深い深い泥の底で手を繋ぐ
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うつくしいあくびとうつくしくはないまばたきをするひとをあいした
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世界中に慈雨は注いで動かない観覧車なども野生に還る
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花ならば争いながら咲けばよい (けれど)ヒトは、(もしもあなたが)ヒトなら
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愛された子供のように花は降り水面をうすももいろに鍍金めっきする
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球場で作家はゲラを抱きかかえサヨナラヒットに背筋を伸ばす
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煙突の掃除夫たちが粉雪の中煤まみれの手でつまむピザ
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この花はだれかを忘れてしまうとき咲くのでしょうか、あまりにも赤・
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春の朝会社に向かう電チャリのヘタッたバッテリちょっと元気に
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もしあたしが 先に旅立っちゃったらさ そのタバコ 一本だけ分けて
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うばたまの夢幻の君がため から揚げ練ず七つどきかな
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からふるな火薬が照らす君の目に呼吸の難しさを知る夏の夜
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冷蔵庫の奥に芽吹く大蒜の(別にヒトとてこれを嗤へぬ)
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ロックともポップスともつかぬ歌を流してる ? いや、流されている
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憧れのあの娘と同じシャンプーだ 知って我かえる彼女一人っ子
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指切りをしよう約束破れても君の小指に触れた本当
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強くなる日差しに未来は透かされて 生きてもいいよ死んでもいいよ
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陽だまりに浸かりすぎたと猫がやや春の死角でひと休みする
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装丁に惹かれた本を紐解いてゆくよう君を知るこの日々は
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最初から分かってたはず だけど君の姿が今は目に痛くてさ
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惜春に 春の彼へのルンルン気分を 詫び状の隙間に記す
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既に結論は出ているタイプの愚痴を肴に干す三缶目
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嘘に嘘 重ねて作ったミルフィーユ 素知らぬ顔で食べてあげるわ
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「幸せになってくれ」とかあなたから聞きたくないのよ、だって私は
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人なんて 変わらないさ 簡単に サイゼのドリアも 変わってないもの
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よぎるのは 全くもって 変わらない 成長もない ただ生きる自分
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「あついあつい」 ぐずる子どもを 横目見て 「あついあつい」と 呟く自分
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「お手柔らカニ」っていうカニがいたらなあ きっと甲羅もやわらかいし
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グレーじゃない グレージュなのよ ねぇわかる グレーじゃなくて グレージュなのよ
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静かなる死骸となればどれも似て、つまり生とは違ひゆくこと
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