地下軌道 定時運行 鉄の箱 未だ醒めきらぬ人体からだを運ぶ
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もうそろそろ人の体を通さずに生まれる人がいていいのでは
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窓辺には夕焼けに紛れるように明日の影が小さく覗く
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地下街のフードコートのざわめきに 言葉を選ぶことさえ惜しい
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行く鳥や お前もきっと孤児だから 見逃してやろうか きょうのところは
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大好きなひとに名前をつけられて解かれたようにお前は笑う
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感情に名を付けられてうっとりと 少女のようにほほえむお前
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ブランコが揺れる範囲で好きでいる、だってそれ以上は飛んでしまう
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使用後は、便座の蓋を閉めましょう。出来ればトイレのドアも頼む
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初めから好きと云えれば苦労せず 旬を逃す初恋の味
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目玉焼き白目の形ととのえる誰かに見せるわけじゃないのに
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二日酔いなんですあの日からずっと喉が灼けつくような初恋
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またひとつさよならをして豆乳を飲んだけれどもまだ苦かった
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僕のことで頭をパンクさせたくて失恋の曲で思い出させる?
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フロイトもユングも知らない夢のなか 君と出会って得意に笑う
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ヒーローが参上した足で踏みしめたシングルマザーの蟻の亡骸
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手を繋ぐことはもうない君のため 少し長めに保湿する朝
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返事にも歌にもならぬ言葉たち集めて早し最上川とか
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例えば、愛艶事苦衷喪失感キリンが逆立ちしたピアス
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おまえの頬母の自家製蒸しパンと同じ柔さと気まずい褒めを
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心臓のリズムに合わせ「トントン」と 背中を叩いてほしい夜もある
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眠れない夜の雨音が不器用に奏でる僕への子守唄
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メタリック塗装しただけの軽さが伝わりそうで目を逸らした夜
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週刊プラモデルの部品は届く 今日で我が子の性別がわかる
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ビデの位置がいつもしっくりいかなくて 私の居場所はここにもない
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君の手を引いてゆくのは僕じゃないってことだけは確かな、波間
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「取り外し操作がうまくできません」秒で消えた思い出の遺書
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繁殖の予定もないのに♂♀を識別したがるヒトの多さよ
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食べ方を見れば分かった傷跡に 唇で触れてくれる人だと
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冬眠から目覚め街へと繰り出せば慌てふためく人もいる熊
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