あかがねの夕陽に染まる横顔にうろたえる僕にも朱がさして
7
泣きたいよ でも泣かないと 決めたんだ 頑張ってるのは 父なのだから
8
強風に 向かいて進む 畑まで 老いた妻でも 束の間デート
5
人生は 鼓動と共に 進みゆく 息する度に 終わりが近い
3
ほとんどが 虚栄に生きる 姿見て 羨ましいか 一時の迷い
2
ご馳走や きれいな女 侍らせる 幸福なんぞ 諦めなさい
1
有名に なりたいもんだ 空虚なる 霞のような 幸福の味
1
試練とか 誘惑とかに 囲まれて 経験豊富 不死身の極意
2
強風で 富士の高嶺に 雪煙 春一番か 一月半ば
2
結核や 戦争中に 比べたら アレルギーなど くしゃみの一つ
1
こっそりと机の下で回す恋背徳感もスパイスにして
9
調べたら 啄木享年 26歳 老いて貧しく 文句言えまい
2
年明けて まだ見ぬ世界 定年後 就職先も 決まらないまま
2
雪の日にした約束は守るべし 雪解けるに 自分と指切り
6
木々を折る一撃電光落雷も 君が祈れば流星になる
3
たよりない小さな微笑 突っつけば泣き出しそうな三日目の月
9
「風の日をもっと楽しみたい」とだけ書いて社長に渡した辞表
11
冬好きの身にも堪える寒の風 母が遺した婆シャツを着る
14
ねこベッド 団子ふたりのキックとパンチをば おひる、と呼んで仲裁せる我
10
売り出しで30円の新じゃがを 腐らせちゃ意味ない 毎日チェック(そろそろ救済したい)
7
青空に向かって飛び立つ龍のよな リュウゼツランの写真に感嘆
9
なにもなくまいにちまったくなにもなくきょうもいちにち 生きて しまった
11
森の中貸別荘でバーベキュー  約束の日に 我古稀になる
9
一日のほとんどテレビと生きている 百年生きた伯母の親友
6
たおやかに白くたたずむ水仙よひとりぼっちの冬にも愛を
11
車椅子伯母乗せ押す手 軽すぎて  その軽さまで悲しい病院
9
空き缶の二つ三つあり テーブルに 四人の宴会 品行方正
7
百歳を越えた肉体 医師に見せ 伯母は少女の顔になりたる
9
晴れてきて パン屋に散歩に行こうかと 思へば今日は定休日かな
4
ゲームだけど 誰かの菜の花コーデ素敵 春を待ち望む心地あはれなり
4