箱庭の中へ死にゆきぬ智慧の実も腐りきつたり 食卓のうへ
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ヒトのに笑って見える ねこの顔 目を細めている 気持ちよいかい
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才能を買ってもらえて嬉しいです  とにかくやります頑張ります
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おほよそは自我の固執にとどまりてあつらへらる現実に止まる 
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即現実手に余る地下劇場102階まで想像力の世紀よみがへれ
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緊箍児きんこじが 縮んでくような頭痛する 許してください三蔵法師!
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短歌とは 愚痴の捨て場と気が付いて いいも悪いもリモコン次第
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口角を上げて綺麗に化粧して ヘの字に曲げて街へ繰り出す
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何気なく ぼんやり観てた 映画から これはと気付く すべてが学び
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酔っ払ったバンド仲間が大声でラップを歌って夜道を帰る
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大時計十一時五十分ほどをフォークロアの花束の静まりて眠れ
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くしやくしやにひらく水芭蕉枯花より晩冬落雪鳥花図に目
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支那の売人に罌粟の花燃ゆるものは愛・麻酔・飼犬
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貝殻の塔階段まで三浬みづつかば水没寝臺へ夫人・夫
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春風に 優雅に吹かれ 花びらが 最後の時を 楽しむ宴
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目も覚める 苦めのコーヒー 飲みながら 春の眠気と戦うわたし
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次々と社員が辞める八百屋にて客の老婆を怒鳴る御子息
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うとうとと宅配待って午睡ひるねかな お昼もおやつも ねこ母はまだ
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言われなきゃ 見えなきゃ分からぬ 境界線 どこまでいいの? お手上げなのよ
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年齢の 一個違いや 同い年おないどし そんなたいした 問題でない
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あなた宛て 問いかけるのは 本心が 経緯が 動機が 知りたいだけで
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日傘差し歩く神社の杜に舞う桜吹雪は初夏の風に乗り
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温かく柔らかな父の頭に ふわり触れらる 車椅子なら
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快晴とベランダ黄色のチューリップ さくらころころ 金曜の朝
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雨上がり 小鳥はなんだか 忙しそう これからなにする わたしは仕事
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コロナ禍を経て口伝の継承は神話絵巻の大行列に
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やらせなく 生きていきたい 自他ともに 嫌いになりたい わけじゃないんだ
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苦手でも 時折、人に ふれたくて きっと自分の 生存確認
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「君」と呼ぶ ことも躊躇う 距離だから もう「あの人」に なってしまった
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買ってきたロイヤルブレットシール無し 雨中の買い物二重の不運よ
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