敷く雲の 浮き立つ空のみんなみに 陽炎かぎろひさせば山と見ゆらむ
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月隱つきがくり 濃藍こあゐとなれるたれに 明星あかぼしひとつけざやかに見ゆ
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じゃあまたね 別れた後に思い出す君は古いアルバムの顔
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四歳の発表会はたぬきさん ごほうびに買うピカチュードーナツ
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あめふりで 六時すぎても 暗夜にて ぬすっとのように ごみだしてくる
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理科室はいつの間にかに閉じられてゾンビの集う宴会場となる
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嗅覚の快不快にも個性あり呼び起さるる記憶もしかり
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白くいることはこの世でむずかしいエスプレッソで崩れるバニラ
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今年もう会わない人と真昼間のきつねうどんでしんみりとする
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うずくまる白鳥たちが綿雲のようにくつろぐ冬の湖
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そびえ立つビル群の窓ひしめいてほのかに夜はひかりの編み図
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いい人の境界線に立つきっと優しすぎると僕がなくなる
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ティーパックひとつ浸して空想の入道雲が湧くゆふまぐれ
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唐突なきみの恋バナいま僕の耐震性が試されている
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今までに消した文字たちはあなたの人差し指の守護霊になるよ
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あなたが死ぬ最期のときに居たいから デートは毎回遊園地だよ
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禁煙をしてから味わえなくなった ベランダの風、喫煙所の空
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君らには百年なんて途方もなく苦しい寿命だと思うでしょう?
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ポートタワー ライトアップが復活だ やっぱり港にアレが無いとね
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6番線 うつろな姿で横たわる、まるでもう息してないみたい(E217 配9744)
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怒りとかイライラしたり悲しみも 通り過ぎゆき無の境地まで
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物置きの奥の奥にはスノボーがもう戻れない冬の香りす
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水をかけさらにもっとと水をかけ焼け跡の中のわずかな眠り
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クリスマス合わせてやります忘年会 ノンアルビールの付き合い軽し
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歌のため 言葉探して旅に出た  空 海 山へ時間も越えた
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珈琲にバニラとろけてアフォガート 苦くて甘い「恋」を食む午後
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この空に月のあること ただ一つ 希望あること忘れないでね
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四歳の唯一の憂鬱 友達と 初めてけんか心の痛み
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寒いのに 雨が楽しい 新しい傘デビューした 師走の夜更け
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風急ぐ駅ゆく我を追い越して落としてくれた木の葉のブローチ
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