『青春の影』胸中で反芻し勇気もらってベルを押した日
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言の刃で 刺しかけてやめ 絵はがきとペンを選んで 刃を葉に変える
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飛沫しぶく岬の果の潮風に椿落ちつつ昼靜なり
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深夜二時虫の知らせで目が覚める 今日はそちらのおねしょでしたか
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波ぎわを一人の女性が歩きくる 距離近づくがすれ違うのみ
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恋い慕う 君の門出を如何にして 背中で泣かず 笑みつくれよう
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夜の匂いのやさしくってあまいこと  明日の不安の痛み止め
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私からちぎれるように出て行った胎児は同い年だよ結弦くん
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今年また誰より早く美しく開花するさくら散る潔さ
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何だろな机の上の三角のプラスチックの何かの破片
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誰かを追う 君の目を追う期待感 こっちに来い来い ゴールはここだ
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夕食で 福神漬けの寿司まみれ お腹いっぱい 今日も幸せ
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あれが梅 それは水仙 これよもぎ ひとつも聞かず子は走り去る
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ニット着た 前髪伸びた 天気良か テカっているし ダサい靴下
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穀物は繁り栄えて傍らにその奴隷らの住む家がある
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この体の代わりに君が食って寝て風呂に入ってくれてもいいよ
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ブラウン管テレビを抱いて田の泥に沈み込んでいくような眠りだ
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いきかたもわからないまま生きており ため息のため息をしている
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しぼみ行く、母の見てくれ、何と言う、昔の厳しさ、懐かしむ今
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さわさわと春の風と木メロディー奏で枯葉の撤去者隠れてハモる
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何でかな真っ直ぐ生きてきたはずが『ただいま』つぶやく灯りのない部屋
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暗闇にポツリポツリと白い花穏やかな死が俯いており
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水ゆるみ 楽しく泳ぐ メダカたち ちぢこむ冬を 乗り越え嬉し
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仰ぎ見る顎のラインの影の中蒼き気配は静かに澱む
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洗濯物干しつつ涙あふれ出す乾かしてくれこの水分も
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寒くなり 夫が炬燵と浮気する しょうがないから 湯たんぽとねる
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新しく箱ティッシュ出した私えらいって日記にかいていいかな
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もうすぐ春と 微笑む君はどこへやら 恨めしそうに鼻水垂らし
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この思い出一体何で出来ている? 砂糖と寒天、告げない言葉
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ひとりでも平気でいられたはずなのに きみの手形がのさばっていく
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