名にし負はば八塩の岡の薄紅葉時雨の染めむ後ぞゆかしき
7
リサイクル店 百円で処分す芝刈り機 後日三千八百円で鎮座しており
29
風に舞う 落葉巻き込み 旋風つむじかぜ 冬がそこまで 木枯しが吹く
11
秋空に 金木犀の 匂い立つ 香り強けき 辺りに漂う
13
雲を裂き青の浄土見えしはソーダ水飲み地をつき歩く
21
あのころは深夜ラジオが友だった今とは違う時間があった
20
世の中にお返ししつつ遊行ゆぎょうくこれまでの何もかもが有り難い
12
追伸に 今でも好きと 本音書く 長い手紙は そのためのもの
25
そう言えばその前好きになった人あなたも夢にご登場だよ/節操なくてごめんなさい
8
砂の山積んでは蹴って崩すのは僕の心の原風景か
20
病院の待合室で嫉妬する僕と医者とを隔つ生い立ち
11
音速の貴公子駆けたストレートS字ヘアピンデグナーカーブ
5
屋根裏の散歩愉しむ猟奇者が見下ろす景色おのが業かも/江戸川乱歩『屋根裏の散歩者』オマージュ
6
不足した自覚があった未知たちの答えがあった未読の便覧
6
蜘蛛の糸 譲り合うなよ つまんねえ 全員平等に 素揚げで食うか
5
わかってる「好き」に理屈はないなんて それでも線を紡ぐほど好き
7
ボスキャラをチマチマ叩く 感動とかいいからさっさと楽になりたい
4
毎日が 何の記念日 何かの日 二日は豆腐 三日は登山
6
ポテチとコーラが体をいじめるところを目撃した 何もしてやれなかった
6
こんなに向かい風だって言うのにさ、健気にヘアセット。向日葵みたい。
7
ステージで光を放つ恒星と胸を開いて見せ合えば闇
6
心臓がいっしょの形に歪んでるらしいわたしのいとしき天使
5
軽やかに「死にたいな」に飛ぶ夜もある 買ったばかりの服の匂いかぐ
6
月無しあなたに会える気がするの 雨音聞いて眠りついたら
11
買い物は生きて帰って来れるかのチョモランマまで登る気で行く
14
親なんて私死ぬまで居るものと子供目線で確実だった
27
もう触れるひとのいないこの身体でも私はきれいだあなたよりずっと
10
新刊は半年かけて八万字書いた力作嬉しい厚み
9
溶けていくアイスはあなたに指さされ 駅のホームで溺れて眠る
9
ワイシャツを濡らす日射しに鼻を突く塩素が下げる体温の妙
10