共に居て ならましものを 一念も 先を生きたる 君が知る辺に
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ぼくの夢ふわりと座るきみのかげ微かに香る初夏の夜明けに
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何者にもならないという幸せがある 今日僕は僕になったよ
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目を瞑る沈む体と浮く意識宇宙になった布団はとける
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かなしみの涙を流す内臓にそっと触れ添う心蝙蝠こころこうもり
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青空を邪魔するように浮かんでるこの気持ちごとちぎれてく雲
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あの会話いつだったのかも忘れててもういっかっていつかっていつ
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水面のバニラアイスに手を振った 乗せた氷の行方も知らず
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しゅわしゅわの炭酸らしさの夢を見て たださやわかに爆発してく
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花手折る盗人のことを褒めている選んでいるだけお前は偉いよ
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深夜便 夢から夢へはしごして 歩き疲れてまた眠り込み
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春服と 冬服重ね もう五月 季節感は まだこれからだ
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もう戻らないものがすべて せめてもの抵抗としての文字の整然
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歯車の数千が回る目の前のあらゆることが余りにもわかる
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無理やり詰め込んだ想いの外装ぐらいはちゃんと規格通りに。
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冷える夜に扇風機から流されるアロマジュエルの良い副流煙
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七時から十一時までは四時間で連絡先は聞けないままで
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刺激的とは程遠い日々だけど耳をすませば凪を感じる
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「次は二ヶ月後ですよ」と言われふと半袖を着たあの人思う
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浴室に干すはずだった干し物は私の部屋でだらりと憩う
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窓を抜け排水口を流れ落ち水路にたゆたう俺の憂鬱
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外れても大事にしてる長方形 「がんばれ!」の文字捨てられないなぁ
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行事行かず 一番好きな子 連れてって 二人だけの 校外学習
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トローチの口移しまでしたくせにプラトニック・ラブとか言わんといてや
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二十の年幅 彼の笑み そんな奴に 死にそうくらいな恋をした
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そのやうにde-odorantを経たこへになどてかてふの寄らむと花は
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妻や母でなければ良かったのかな いいえそれでは出逢えなかった
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往来の絶へた通りに立ちすくむ此処で幽鬼になるのだらうか
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虫愛づる 君を横目に 虫食べる 虫への愛の 方向の違い
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母になり 前へと進む君をみて 後ろで手を振り 心で叫ぶ
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