ガジュマルが 葉散りぬるを 誰れも見ず 「おしゃべりしよう」のコマンド押す
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もう二度と 戻らぬ時と知りつつも 思う想い出 甘き切なさ
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灼熱の道を歩けばスイスイと赤とんぼ来てエールをくれる
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今どきの夏の現場の作業服老いも若きも扇風機付き
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朝顔の咲き映え萎む毎日にあなたの笑顔を重ねつつ摘む
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わがたち 運動足りているかしら 姉弟ふたりだからね そこそこはしる
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夕暮れの一瞬みたいな服を着て金星みたいなピアスをつけた
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立ち止まり 重荷を下ろして 振り返り そこまで捨てた人生でもなき
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絶食で待つ外来のテレビには 美味そな焼きそば 我慢の試練
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待ち長き外来 廊下の長椅子に 皆のため息鉛の空気
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我よりも若きの逝くを見送りてざん永らふは不思善なるや
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寿命とは寿ことほぐ命と書きにしを我は最期に言祝ことほぐかしらん
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運命と諦めきれずに毒を吐く 命の残滓有明の月
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厚ぼったい文月の風 主人あるじ逝き「本日休業」虚しく揺れる
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憂鬱に濡れしまぶたにわたくしの香り移したハンケチ託し
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鈴なりの朝顔数える朝の君 昨夜の涙の影も見せずに
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朝顔の奥に潜りし花蜂は我が物顔の憎し君かな
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アラートな日のが多くて特別な感じは消えて8月にる / 「熱中症警戒アラート」発令19
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その話 そもそも聞いてないおそれ そもそもわかる気がないおそれ
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帰り際結ぶ本音の端っこが今頃君を締め付けてたら
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不注意のミスは毎度のことなれど今は暑さのせいにしておく
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花咲いた 母から貰う ライン見て 元気の便り 素晴らしいもの
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目覚めより鼓動音は高らかに出掛ける海の波は静かに
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ここがなきゃ行くとこないの誰だって一つの地球一緒に愛そ
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埋め尽くす君の記憶は心にも、風に解けた泡の中にも
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夏の朝 こころに映す蝉の聲 時の彌終いやはてまで刻む波
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思い出の中のあなたは眩しくて 夏なんていっそ来なきゃいいのに
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蝉、蝗、ざざ虫、蜂の子、蟋蟀は食える しおから蜻蛉もきっと旨かろ
5
「じゃあまたね」 いつもと違う冷たい別れ 目の温かさで振り返れなくて
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海を見に行きたいけれど叶わずに 歌集を買った「海のうた」と言ふ
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