実家行きを 傘か日傘か決めかねて ちょこちょこ見直す週間予報
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芳年の筆先のごと孕女の胎裂きてみよおまえの血筋
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蒸し暑く サメにゃんリラコを 試しをる 肌触り良し 涼しき良き品(これはユニクロ)
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検診の前夜を忘れて酒を飲む だって貴方が来てくれたから
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「ありがとう」ママは幾度もくり返す親になるとはこういうことか
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すやすやと寝息をたてる幼子に失くしたものを取り返してる
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月曜日休みの諸々持ち寄りて蒸した教室授業始まる
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早鐘をうつ心臓はちいさくて軌跡のようにおいてゆくきみ
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自動ドア くぐりしあとに 濡れ裾の 雫残りて かかと滑らす
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ひだまりをこわがるだれかがひまわりを太陽のようだと言っていたね
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目に青い一面の田は水落とし 農夫黙々炎天下の午後
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一日に何回「ママ」と呼ばれたか 何回「待って」と答えただろう
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一歳は恐る恐ると手を伸ばす 顔ほどもあるひまわりの葉へ
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自らの名が呼ばれるを聞くたびに命のかたちを与えられてる
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花と二人だけの世界に生きている働き蜂だった頃の話
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ありなさすぎて今思ってもたじろぎそうに心に映り忘れられない
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まっすぐに自分のことを話してくれてもっとたくさんきいてたかった
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餌くわえ親鳥ちょこんと休憩す我が家のベランダ ゆっくりしてって
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在宅の合間に料理仕込むのよベーコン焼けたオーブン告げる
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あたらちい おつめとぎだよ うれしいな ねこのほんのう バリバリバリバリ
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薄力粉 詰め替え見るたび このところ なんにもお菓子焼いてないなと
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木々たちは雨に光って妖精に風にざわめき妖怪になる
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短歌詠む 才能ないのに また詠む この短歌自体 才能ない証
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無かったね残念だったね自分へと同じため息付く人へにも /歌壇の朝に
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古希すぎてかど取れ丸くなり損ねトゲトゲつののウイルスに似て
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推しメンのワンマンライブがある街へオッカケのつま付帯するつま
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遅延にて 見知らぬ一駅 歩いてみる 詩的な期待も 日差しで消沈
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思春期の娘か父をとほざけて寝起きのわるい下は四歳
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独身の友の誘いは悪魔的ことわってする妄想は無料ただ
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朝一の事務所はいれば正体がつぎつぎばれる白衣作業者
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