梅雨明ける前から猛暑続いてる去年のことは思い出せぬが
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炎天を駆ける風に打ちなびく青田は梅雨の戻りを待ちぬ
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霧の中 冷たい森に 生きていく 慣れない暮らし ランプは消せない
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目を閉じる度に吸い込まれる谷は 深い青の谷 夏風邪の夜?
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薔薇一輪背の高さに開きおり夏本番の行方覗かむ
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夜遊びを責める代わりに朝食の焼けた目玉が私をにらむ
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どれ程の吐息を混ぜたら埋まるのか貴方以外でわたしの中は
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本当は聞きたいことがあるけれど聞いてしまえば終わる気がして
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「何か音鳴っているね」と三歳は初めて気づく蝉の鳴き声
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体力は水溶性であるらしい汗にプールに削り取られて
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初セミの声を聞くまでセミの声忘れていたような気がしたんだ
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早くしろ時間がないぞ遅れるぞ幼子までも生き急ぐ現代いま
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ヤニ吸って丼かき込む間にも、同期達は仲良くランチ
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快適さ求めたつけか猛暑日は人影のない午後の公園
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別れさえ等間隔に並べられた人間性の感動ポルノ
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窓拭きは見て見ぬふりのツケ払い よりにも寄ってこの真夏日に
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虫除けの有加利ユーカリかげば遠き日の公園に鳴く蝉のがする
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溢れてく尽きせぬ疲れただ僕はお腹が空いたお腹が空いた
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まどかなる真っ昼間のみに刻々と符号は襟に咲き登らせる
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初蝉せみ鳴きて「あゝ夏が来た」どころじゃない猛暑乗り越え生きようぞ とか
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イヤラシく 小さく少なく なってった ついに袋も ちまくなったのね
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平日のたった四日がしんどいよ暗がりの隅で壁に凭れる
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天上の小娘たちは羽をがれ湿った地下牢そのめい果つる
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継続けいぞくが ちからになると 知りつつも 続けることが 何よりがた
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プロならばひと夏持つかなショートヘア耐えてひと月承知のセルフ
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寝ぼけたか ちま猫 飛び起きニャーニャーニャー はいはい どんな夢見ていたの?
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ねこたちは お気に入りの場所 スヤスヤと 母ももうすこし朝寝がしたい
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治りかけの傷跡 いまさら痛痒い こころのキズも おんなじかしら
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やけくそで決断すると気がつけばいつもなぜだか茨の道で
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手を振って 友と別れる 歓楽街 子供の頃と 違う寂しさ
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