抱擁はひとつの旅ねさみしさを安全圏で咀嚼してゐる
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駿台の 二日の気遣い 無下にして 共テ模試後に 通常授業
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一期一会 バスで出会った おばあちゃんの くれたぬくもりコーヒー 手に握りしめ
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フライパン秋刀魚を巧く焼くコツを動画で学ぶ父 母のため
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背景を透明にした子の写真異世界に乗せカード仕立てる
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あのひとがわずかに書いたメモにさえ情趣ほのかに詠雪えいせつの才
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トイレから戻った猫がゴロゴロと喉鳴らしつつ布団にもぐる
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三連休終わったあとがつらいから土日水の休みがいいわ
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あ、踊ろうと思って乗った京都行き ボコボコにされた日の日記
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ごとに羽織る上着も厚くなる 空気と相談パーカーを着る
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車内には早くもコート着る人と シャツ一枚の人もまだいて
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自転車で坂を上れず身に染むは電動補助のなき辛さなり
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卵から孵化してみればその日から 強制参加のデスゲームです
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秋寒の 季節となりても二十四度 窓からフッと 白風入り来る
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イベントの残り香ねむる公園の静逸の朝ひよどりの鳴く
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わくら葉の 落つる柿の木 寒々と 若葉の頃の 姿懐かしむ 
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片恋を 始めたときから 伸ばしてる 黒髪ついに 貴女に追いつき
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知らぬ間に 曇った眼鏡を拭きながら 泣いていたのは 私か硝子か
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目が覚めて ひとことぽつり ねぇ起きてる? ひとことの返事 ひとときの幸せ
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霜月と 思えぬ陽気 木々達も 葉を揺らしては 秋を愉しむ
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北の国より帰還、こちら暖かくいい秋みつけた。
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幸福を 追うばっかりに 過去に手を 伸ばしてしまうの 未練はないのに
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雨の日も楽しかったの何故だろう未来を持った子供だからだ
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ストーブの やかんのお湯を 湯たんぽに これからずっと 春まで続く
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丁寧に跡を濁さず漏れ出した音楽だけを残し さびしい
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窓枠に忘れ物あり夏の虫わたしも同じ人生一度
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「幽霊の正体見たり」波の花 げにあるものにも怪しきものぞ
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天平いにしへの写経の労苦 如何いかほどと 几帳面なる筆の運びに /正倉院展
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潔く 白黒つけて みたいけど 思い知るのは グレースケール
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商業化されていくんだこの夜も カメラアプリを開く友達
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