透明な実存主義を霞ませて灰になってゆくあなたもあなたも
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目が覚めて 耳に振り出す 蝉時雨 夏の訪れ ミンミン響く
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真夏日も桜の木陰で癒された 照りつけるにキミが恋しい
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オーブンの 熱気伝わる 小麦の香 甘くふくらむパンへの期待
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だんだんとこれあれそれが増えていきこの暑さではそれすら出ない
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むすめ言う「なんか小さくなったよね」背丈と共に穏やかな日々
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賜りし天王祭のもろこ寿し嫗の腕の衰えしらず
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星だって 生まれたら死ぬ 輪廻の輪 くぐり抜けられたら… ビックバン…
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待受けを息子の撮った紫陽花に 君との想い出ひとつずつ消す
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空の青 日傘の黒と 白い波 あと何色の 君を足したら
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起きていることがもともと普通じゃない目覚めて急いで眠剤を飲む
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二度寝するあらゆる苦しみから逃れ冬眠の熊を妬ましく思う
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濃ゆすぎて薄められないあの時間とき を 透明にする薬が欲しい
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自由律俳句のリズムだけを聴いた 右のイヤホンで不自由に
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足の爪 赤青黄色にしたい それだと指が一本足りない
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カラフルにしたい気がした今日の顔 気分変わってすっぴんでゆく
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耳残る これってあの曲 鳩のさえずり 音程バッチリ 日々感心
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窓の外アゲハ舞いきて紫蘇の葉に風にゆらるる猛暑日の涼
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朝六時 畑から戻る翁おきな居て 一日ひとひが長しと小さく語りぬ
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半分に 分け合うといふ 優しさを 示すかのよう 朝の半月はんげつ
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手を引かれ健診うくる媼は九十一歳くじふいち「転ばぬように」と声をかけ送る
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あの夏はきれいな空がありました わんこの雲が浮いていました
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さようなら あなたの人生 から ログアウト
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むずいと命令するとやさしい文AIに笑う独居老人
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また君に恋しちゃっていいですか 好きにするから笑ってくれよ
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すぐ切れる縁に愁嘆 その糸を手放したのは自分の癖に
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読み終えて余韻にひたる時長く推しの作家へ自慢が続く
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ご飯だと呼べば人よりすみやかに餌皿前で待っているネコ
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初めての 家族以外と 見る花火 どうだったのか わくわくしちゃう
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鎌倉の海の写真をくれた君 幸せがほら溢れてきそう
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