ぽつぽつと落とすパン屑真似るよに 日々を歌って道標どうひょうにする
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空っぽの記憶の中に残る歌昭和歌謡を母と聴く夜
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次々と社員が辞める八百屋にて客の老婆を怒鳴る御子息
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貝殻の塔階段まで三浬みづつかば水没寝臺へ夫人・夫
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支那の売人に罌粟の花燃ゆるものは愛・麻酔・飼犬
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くしやくしやにひらく水芭蕉枯花より晩冬落雪鳥花図に目
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大時計十一時五十分ほどをフォークロアの花束の静まりて眠れ
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即現実手に余る地下劇場102階まで想像力の世紀よみがへれ
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おほよそは自我の固執にとどまりてあつらへらる現実に止まる 
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アラビア人かなしきいくさ世をへだて民族浄化ゆくへしらずも
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正統防衛つねに白鶏十字軍ひとりころさば生贄は百あまり
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人間の為すことを躊躇はず民・民を蔑める今様 軍国和歌集、は
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アウシュビッツ以降、個人が歴史観を具有するのは野蛮である。
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或る島国にて。田舎風芋粥が流行り――、六本木ヒルズ文学が隆盛を迎える、
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ナツィズムの夏 医師は診察鏡を翳し堕胎宣告をせり、狂人に
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わたくしの狂気に巻き込まれ死ぬひとがあなたの正気に巻き込まれ死ぬ
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カフェラテに初めてハートが描けたよと写真に既読なんか嬉しい
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幼子は狭き我が家を駆け抜ける まだまだ寝ないと親から逃げて
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玄関で一人で靴が履けなくて履かせた母の足のちいささ
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僕たちの恋は耳鳴り、知らぬ間に落ち知らぬ間に名前は愛に、
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水式時計たたふ羽根散る憂慮あさからず正午門・緑橄欖花
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ダンテ・ゲイブリエル・ロセッテ画伯憎しみき群天使、葡萄、鳩尾
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少年は展望室に青年は燈臺がいしずゑへたちぬ、岡と岡
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叛天使はらめる暁の立葵青く告解の十字架へ斑なるみどり
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八重桜 共に過ごした年月が 古き団地に静かに咲いて
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馴犬支配しゆき叱責す主人のかなし頸枷を牽く
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自傷のごとき自嘲に充ち充ちて畢竟死は喜劇俳優に外ならず
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仮面劇にはたれもが左右へへだたりて中央には翼賛図、曲々し
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父母優生学に分別すはなはだしくおそろしき医師ある
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統計の父ありて確実に死すきみらやさしかる絞首臺へ誘ふも
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