慣れぬ手で 五十路の親父 洗いつけ 落として割れた 癒やしの器
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私より料理がうわ手の娘婿「お母さん、包丁研いでおきました」
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大樹なる楠の二本を額縁に 丹沢かすむ涅槃仏やさし
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離縁して生活保護の財政でクラス会には夢でも行けぬ
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弁証法かじりて反の道歩く きびしき岩場に一輪の花
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ゆめ知らず智慧の階段踏みしめて錬金化学に塩基無水・素
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地球物理的運動すなはち万物の起源学家系図に零る洪水計
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夢前川過ぎりき彼奴こそは敵 芥子菜色の襯衣ぞあざらけき
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第六元素純粋触媒より発見す西暦一八九六年・砂時計過程一室四平方メートルの国家
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「ニャーオニャーオ」動けぬ老犬我を呼ぶ いつからキミはねこになったの?
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一オクターヴ元素の螺旋階級説空気壜ゆいづ硫黄の花
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金属精製第一天月より銀を第五天金星より銅を創造したまへり
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「がんばれ!」の声援受けて後ろ足動かぬ老犬朝のお散歩
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光から目をそらしなさい明日も生きているひとはだまって
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くまのプーさんアルファベットをおぼえたらはじまりははじまりのおしまい
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さようならはなれない手をあわせましょうともだちになれるあなたと
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瞬間沸騰器だってぶちこわすわよだれはあなた ごみ捨て場にはまほうのかがみ
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おれの百一匹目をけちらしてゆきのちあめの天気予報士
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キミ達も伐採されてしまうのか今年が最後 桜のトンネル
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「てか明日、地球最後の日だってさ」ハートに折られたメモを隣へ
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思い出す土曜はいつも晴れていて なのに君の顔だけ おもい だせなく
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ぽつぽつと落とすパン屑真似るよに 日々を歌って道標どうひょうにする
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歳下の 僕の後ろを 歩く君 桜も見ずに 先に逝くとは…
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貝殻の塔階段まで三浬みづつかば水没寝臺へ夫人・夫
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支那の売人に罌粟の花燃ゆるものは愛・麻酔・飼犬
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くしやくしやにひらく水芭蕉枯花より晩冬落雪鳥花図に目
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大時計十一時五十分ほどをフォークロアの花束の静まりて眠れ
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即現実手に余る地下劇場102階まで想像力の世紀よみがへれ
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おほよそは自我の固執にとどまりてあつらへらる現実に止まる 
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箱庭の中へ死にゆきぬ智慧の実も腐りきつたり 食卓のうへ
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