丁寧な暮らしをしてる気になった 湯気立ちのぼる鯖の塩焼き
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飽きたとも慣れ親しんだとも言えるもの 女房、仕事、自分の顔も
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秋風に幽かに混じる藁焼く香 田じまひ近き家のあるらむ
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いたずらに吾子が鞄に忍ばせた丸い積み木が今日のお守り
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花の色 草の緑を 焼きつける あとひと月も すれば白銀
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懐かしき秋刀魚の美味は大人びて 苦かりしワタ えも言われずして
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21グラムしかないはずなのに 無いだけで、こんなにも軽くて
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あかねさすむらさき草に寄る虫は 名をあてられて丸くなりをり
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来る年の悲喜こもごもを記さんとまだ真白きな日記帳買ひ
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レンズ越し ピンボケでいい 君と見る綺麗な月を永遠にしたくて
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こだわりを、癖を、「らしさ」を、失って まっさらになって目を閉じたひと
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月は満ち桜も満ちて思い満ち悲しい結末つゆほどもなし
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もう二度と 書けぬ名前が せつなくて 唇を噛む 国勢調査
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夜半の秋 窓から伸ばす 手のひらに 月の光が 燦々と差す
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とくべつな夏を忘れぬラベンダー再び咲きて雪虫の舞う
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今はただよき日のほかは茫としてふたり重ぬる金婚の日々
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神様の数限りなく今日の日は金木犀の色の夕焼け
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九日月くやづきを見れば今でも思い出す 地震の夜を照らしたるきみ
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いたづらで 棚から猫が落とす本 たまに息抜きせよと云ふ如
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アトラスの良き理解者は袋詰めされたミカンだ一番下の
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寝室の余熱をさらふ 秋雨のには 毛布の温もりを足す
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テスト前 ふと脳内に 浮かぶのは 単語じゃなくて 君の横顔
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きみゆえに無性に無常考えるこの世はあの世あの世はこの世
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いつからか友仲間から遠ざかり一人宇宙を彷徨っている
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一日中汗流しただろうおじちゃんの冷えたビールが誇らかに立つ
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地球よりもでかい猫の腹の上で眠る夢をみたい
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もしやまだ…と思いて置きし扇風機やっと仕舞ひて神無月秋
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いつもなら つがいの雉鳩 ぽつねんと 今日は素直に ごめんて言うよ
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明日の晴れ 夏物洗う 淡々と 夏の疲れも 洗い流して
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柿の実が たわわに実る 晩秋の 貴重な晴れは 洗濯日和
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