次々と社員が辞める八百屋にて客の老婆を怒鳴る御子息
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箱庭の中へ死にゆきぬ智慧の実も腐りきつたり 食卓のうへ
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カフェラテに初めてハートが描けたよと写真に既読なんか嬉しい
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幼子は狭き我が家を駆け抜ける まだまだ寝ないと親から逃げて
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玄関で一人で靴が履けなくて履かせた母の足のちいささ
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ダンテ・ゲイブリエル・ロセッテ画伯憎しみき群天使、葡萄、鳩尾
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八重桜 共に過ごした年月が 古き団地に静かに咲いて
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この曲を聴いてはならぬ幸せな貴方との日々吾を苦しめる
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戦後生き 戦前を生む 私たち せめて届いて カナリアの声
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日焼け顔麦わら帽子がよく似合う亡き父想う命日の春
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花々に囲まれ庭にまどろみて 紫蘭と踊るほろ酔いの夢
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玄関にあちこち転がるライムグリーン 立ち入り禁止のハッカスプレー
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川の辺でトランペットを吹く学生 澄んだ音色が空に溶け込む
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なぜだろうみんなが好きと言うものがよくわからずに雲を眺める
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人の目は欠点ばかり見つけがち君の伸びしろ私は見える
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すくっと立ち下向く花のおだまきは 静御前の舞に揺れてる
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亡き友が焼いた茶碗 温もりに 包まれて飲む 朝の一杯
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好々爺 看護師さんの前でだけ 家族はむっつり 柏餅食む
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朝ぼらけ翠の山に霧の立つ通院のみち山くねり行く
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そのへんの言葉じゃサイズが合わなくて 裸の気持ちがくしゃみをひとつ
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長旅はいかばかりか 「ただいま」のひと言残して眠りこける息子
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孫ら去り静かになった食卓に残り物食む二人無口で
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夏が来る 日課の散歩は老犬よ あなたと私の体力勝負
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長旅の土産は特大洗濯物 連休最後のベランダ飾る
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朝食後 歯みがき洗濯洗い物 天気に尋ねる優先順位
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早朝の二階の足音世の中は連休明けかスタートは雨
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レギンスとレッグウォーマー離せずに歳を取ったとしみじみ五月
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花菖蒲しおれる頃に一つ咲く 亡き友しのぶ雨の音のなか
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誰だって誰かを失い生きていく 色んな後悔心に綴じて
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眠るの耳元にそっと「さんぽだよ」ささやく夫に優しさを見る
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