硝子戸一枚へだて漏れきこゆ工兵のこゑ 大伯父よ去ね
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日灼けせる空地の壁へ病みしまま囲はる弟切草のおとうと
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英靈碑肩欠けて零る菊の蘂 かくごとくひと殺むるは雄
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わが祖父は英靈か 虐殺ののち肩口に消ぬる緋の初霜が
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ぼく達の歴史にわたしはいないからヤグルマギクの花言葉って  ?
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シオニズム 角砂糖水へと溶けて水薔薇国家の仔羊の頸
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基督をひとはもとめむさでもなほ――、無棘薔薇冠など編みて刑吏
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ほおずきが有るからきっと迷うまい心細気なあかり添えつつ
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人草絶ゑて弔鐘へ祷る慰霊碑へ霙 皇帝とは誰なるか
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敗戦忌 すめらみことへゆくすゑをしめし若き柩工は死せり
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戰犯とは不肖の綽名われいくさに倚らざれども死なず
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國民総戦犯ゆゑに絶たれたる昨年の忠魂碑はたれのはか
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われ義しき國民なれば崇拝すクリスティアーノならず 墓を暴かむ
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父殴てる馴犬哀し。頸枷に「愛われを創れり」彫られて
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神神に主神のあらば 靑藍の仔を降しまづ人間を亡ぼす
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奇蹟のかけがへは誰がつぐなふか瞭然と蘇りなき慰霊碑の石
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戰乱の臭ふ 澁谷交差点群衆も靴鳴らしかへらず
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蝉時雨 ふと立ち止まり目をつむる 矢の如くゆく光陰の中
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呪はるる國民たるを耐へず戰争の責任転嫁さる 死者へ
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増長すこの若者らみづからを皇帝と呼ぶすめろぎ擱きて
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歴史喪失そののち四月朔へと雪 長靴の裡入るけがれ
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どんなにか素敵だろうかあの人に〝ありがとう〟って伝えられたら
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月わずか120ほどのポイントをごほうびとして歩く買い出し /歩数ポイント
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降る雨の雫の中に秋がある 清めの如くわだちを染めて
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風運ぶ 青さが少し薄れゆく  ホットコーヒー 夏に句点を。
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茹でたての枝豆を噛む喜びよ 夏という名のご馳走がある
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通勤の改札出れば天気雨 夏の終わりの香りが満ちて
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座る人エサくれるかと寄って来る鳩の可笑おかしいその急ぎ足
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子を産んで2年育てた家を越す 壁のシールを剥がすも愛し
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いつだってぼくらはきっと若すぎる 上手くできないことばっかりで
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