白雨より 緑いちめん 洗われて 耕運機の空に 里山の夏
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一人去り 二人去りして 見送れば 歳月の粉雪しろく 肩に降り積む
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これじーじ いた孫の絵 目口鼻めくちはな あちこち跳んで じじいもゆらり
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750ナナハンで 八月の砂 駆け抜けし友 入道雲立つ バイクに散った夏
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久々に読みたい本があったから 週末新幹線で帰るね
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空中を 俊敏に舞う婦人の手 井戸端会議の演出を担う
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憧れの巻き髪 「憧れのままで良い」と 鏡に写る巻き髪
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群衆押黙りて支那人の喬氏の名札へ唾を吐きたり
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あしびきのヤマハピアノまへ調律われときみとをおなじくもせず
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戦争になるらし錨しづめるかのごと異人しづめて日本国民
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よくなれど小麦は小麦熟れつつも一デナリよりたかくはならず
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空気人間達の晩餐空気飾り立てて箱の外へいづることなき
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ドレスコードを守れ。紀伊国屋書店にて白昼刃物ふるふをとこは
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われならず火事の青年音立ててピアノへむかひ指を揃へり
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ずれてゐる禿頭の侭波止場へと仕掛けるものは爆弾とする
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ジャガイモは 私に命を救われて 冷蔵庫でピンと根を張る
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淡色で 描く川舟 白壁に 水彩の秋 熱帯夜に飾る
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ただいまと帰ればおかえりのキスする 猫の鼻はいつも濡れてる
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撫でる手に湿度と熱を感じ取る あなたのしたいことが分かるよ
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フランシスコ・デ・ゴヤのたじろぎ憂愁公爵、夫人応接間
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蕎麦屋にて切る十字かは伊達巻を食すジーザスすがれ
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蕎麦の花むらさきにしてあはかりぬ青年の頬てらす逆光
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国境を越ゆる医師団主のごとく死ぬなたかだかコロナごときに
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解ろうとしないまま眠る教室の隅に今でも私は俯く
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ラジオから シェルブールの雨傘 ゆくりなく 無音の窓に 豪雨の雨脚
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「キューピーは天使になれない 高速道路こうそくに微温みたいにひろがる空は」
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超写実的に熔融せる缶のキャンベルスープ罐の天使絵
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寺町をこゆれば墓場曼珠沙華ほのほのごとくしたたりやまず
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されかうべ置かれある書机に扁桃花つかのまを花やぎてにくしみ
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仰天にそはゐまさずさばいづくにぞ一過性脳虚血しらじらと
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